不動産取引は株式とは違い、相対(当事者間)取引のため、取引価格の相場がわかり辛い特徴があります。
より正確且つ売主、買主双方が納得できる価格を算出するために複数の鑑定手法を駆使し、売買価格を設定する必要があります。
不動産鑑定評価はデューデリジェンスの「経済的調査」の一環として行われます。
本記事では不動産鑑定評価基準の一部を抜粋してご紹介いたします。
その名の通り、近隣・同築年数・同規模・同価格帯といったような取引事例を収集して、地域的要因・個別的要因を勘案し、
また時点修正(取引事例の取引時点から現在までの賃料や物価の上昇・下落など)と事情補正(線路沿いである、嫌悪施設の近くであるなど)を加えて
価格を求める手法です。これによって算出される価格を「比準価格」といいます。
冒頭で説明させて頂いた通り、不動産取引は取引事例の収集が難しいため、土地&建物ではなく土地のみの鑑定手法として使われるケースが多いです。
不動産の再調達原価(今まったく同じ土地を取得し、同じ建物を建築する場合の費用)を求め、減価修正を行い、
価格を求める手法です。これによって算出される価格を「積算価格」といいます。
ここでの再調達原価には「付帯費用」も織り込むことが重要です。
付帯費用の例としては販売費、広告宣伝費、公租公課、借地の場合は地代、テナント募集費用等、
取得後にかかる費用も勘案しなくてはなりません。
(逆に既存建物の解体費用などは含みません。あくまで「更地」に同じ建物を建てるとするならばいくらか、を算出します。)
減価修正には、耐用年数に基づく算出方法及び観察原価法があり、併用して行います。
所謂「利回り」に基づく価格算出手法で、
対象不動産が生み出す純収益を販売利回り(還元利回り)で割って算出する「直接還元法」と、
一定期間(保有期間中の1年ごと等)ごとに純収益と復帰価格(売却価格)を現在価値に割引き合計していく「DCF法」があります。
一般的にDCF法では1年毎のキャッシュフロー表を作成し、純収益に割引率を複利で乗じていきます。
(ファイナンシャルプランナーが作成するライフプランシートの収入増加率のようによりライブ感のある数字を求めるためです。)
DCF法の最終的な収益価格は、想定される純収益の現在価値合計+復帰価格現在価値で出します。
(つまり、キャッシュフローが毎年一定で、建物価値も一定とする直接還元法と違い、
キャッシュフローも建物価格も時間的価値と本質的価値を考慮して価格を決めましょうという方法です。)
DCF法で求める収益価格=保有期間中の純収益の現在価値の合計+復帰価格の現在価値
純収益の現在価値=純収益×複利原価率
複利原価率=1/(1+割引率)n乗(nは経過年数)
利回りの設定は売主からすれば低ければ低いほど売却価格が高まるため、
買主側の視点で考えるとわかりやすいです。(希望購入価格を求める)
○取引事例比較法
(例:同エリア同純収益の成約済み物件の平均表面利回りは10%なので、想定純収益÷0.1=希望購入価格 という交渉)
○借入金、自己資金の還元利回りから算出
(例:借入金は5%、自己資金は10%で運用したいので、各々の割合を乗じて加重平均した%が希望利回り)
他にも毎年の借入金返済金額から希望のキャッシュフローを算出し、還元利回りを算出するなど様々な手法がありますが、
手法、というよりは買主の「事情」で購入希望価格は設定され、交渉の末に決定するモノですので、参考程度にお考えください。
先ず運営収益から運営支出を差し引いて「運営純収益」を算出します。
その後「資本的支出」を引き、「敷金運用益」を足し、(双方計上の必要があれば)
「純収益」を算出した後、「収益価格」で除す事で還元利回りを求めることができます。
IRRとは将来得られるお金の現在の価値と投資額が等しくなる利益率のことです。
(利回りと違う点は得られたリターンを再投資、つまり複利運用する点です。)
不動産投資においてIRRについての明確な基準はなく、マーケット、投資環境、リスク特性などで変化します。
感度分析とは、特定の変数やパラメータ(賃料、空室率、金利、運営費用等)が変動した場合に、投資のキャッシュフローや最終利益にどの程度の影響を与えるかを定量的に評価する手法です。これにより、投資のリスクや収益性をより正確に把握することができます。
感度分析を行うことで、投資家はさまざまなシナリオをシミュレーションし、リスク管理や投資戦略の策定に役立てることができます。