投資法人は、その資産の運用以外の行為を営業としてすることが出来ません。
可能な業務:有価証券・不動産の取得、譲渡、貸借 不動産の管理の委託
※新築工事、増築やリニューアル工事の発注者・注文者となる事も可能です。
また、本店以外の営業所を設けて使用人の雇用をすることも出来ませんので、
その資産の運用に関わる業務を資産運用会社(AM)に委託しなければなりません。
(この資産運用会社は「金融商品取引業者」である必要があります。)
また、投資法人は配当の分配・払出等の事務についても一般事務受託者に委託しなければなりません。
(特定目的会社の場合は支店の設置や使用人の雇用が可能なので混同しないように注意が必要です。)
運用の範囲についてですが、「特定資産」については、
有価証券の取得または譲渡、有価証券の貸借、
不動産の取得または譲渡、不動産の貸借、
不動産の管理の委託、宅地造成、建築の注文者となることなど、とされています。
特定資産とは有価証券、不動産賃借権・地上権などで、その範囲が規定されています。
また、2014年の法改正に伴い、特定資産に再生可能エネルギー発電設備及び公共施設等運営権が追加されました。
投資法人は「内閣総理大臣の登録」を要します。
(資産運用会社が金商法上の登録をしていますが、投資法人もまた登録が必要です。)
投資法人の役員会は執行役員1名に対して監督役員は2名以上である必要があります。
執行役員の任期は最長2年、監督役員の任期は最長4年です。
★投資法人規約
※投資法人規約の変更は投資主総会の特別決議事項となります。
規約の例としては以下のものがあります。
・投資主の請求により投資口の払戻しをする旨又はしない旨
・投資法人が常時保持する最低限度の純資産額
・資産運用の対象及び方針
・資産評価の方法、基準及び基準日
・金銭の分配の方針
・執行役員、監督役員及び会計監査人の報酬に関する事項
・資産運用会社に対する報酬に関する事項
★投資法人決議事項等
①投資主総会の承認決議事項
・資産運用委託契約(AM契約)の締結
②役員会の承認決議事項
・投資法人と資産運用会社の利害関係人等との一定の重要な取引(軽微なものを除く)
・決算の承認
(投資法人の運用計画や成績は投資法人や資産運用会社に委ねられているという事です。)
③投資主の承認決議事項
・投資法人の合併(投資主の三分の二以上の賛成)(特別決議)
※合併が適格合併であれば資産を簿価で承継、非適格合併であれば資産は時価で評価し直します。
投資法人の執行役員解任(普通決議)※議決権数を規約で加重することが出来ます。
2001年9月に初めて東証に上場されました。
また、2008年5月より海外不動産への投資も可能となりました。
上場株式と同じように投資口の払い戻しがない「クローズドエンド型」になります。
これは上場制度によって投資口の換金性を保証している(第三者へ売却する事でのみ、投下資本の回収が可能)という事になります。
J-REITの上場審査基準において、委託する資産運用会社が一般社団法人投資信託協会の会員であることが必要です。
・J-REITの上場手続き
資産運用会社にて、①宅建免許取得 ②取引一任代理等に係る認可 ③金商法の投資運用業登録の手続きを行います。
投資法人は設立企画人が内閣総理大臣への届出を行い、東証の上場審査を経てJ-REITの上場となります。
・J-REITの合併手続き
投資法人の合併には投資主の2/3以上の賛成(特別決議)が必要です。
※みなし賛成制度は対立する議案が提出されたときには使えないため、
敵対的買収(TOB)などで対立した議案が提出されるときにはみなし賛成制度は使えない事に注意が必要です。
主として投資口の払い戻しを行う「オープンエンド型」になります。
※あくまで払い戻しは任意。限度額の設定も可能。
私募リートでは投資口の価格が株式市場の影響を受けにくいとされており、
(鑑定価格をベースとするため、より不動産への直接投資に近しくなり、上場リートよりも分散投資効果が得られる)
金融市場や不動産市場の短期的動向に左右される事なく売却時期を設定できるメリットがあります。
また、非上場のREITですので、私募REITには金商法のインサイダー取引規制が適用されません。
市況としては、上場REITの保有資産額が約22.5兆円であるのに対して、私募REITは約5.6兆円の規模となっており、
投資家で最も多いのは地銀で、35%程度を占めております。
私募で投資口を発行し、6ヶ月以内に上場申請する場合、
投資口の割り当てを受けたものとの間で上場以後6ヶ月は継続所有することを書面で合意する、
かつ東京証券取引所に提出する必要があります。
(投機的な取引を防止する為)
・投資主総会
規約に別段の定めのある場合を除き、投資口過半数の投資主が出席し、その出席した投資主の議決権の過半数をもって決議を行います。
ただし、投資法人は規約によって、投資主が投資主総会に出席せず、
かつ議決権を行使しないとき、投資主はその投資主総会に提出された議案について賛成するものとみなす旨を定めることができます。
★みなし賛成制度(REIT、TMK共通)
この規定による定めに基づき議案に賛成とみなした投資主の有する議決権の数は、出席した投資主の議決権の数に算入されます。
ただし、複数の議案が提出された場合において、
これらのうちに相反する趣旨の議案があるときは、当該議案のいずれをも除くとされています。
・資産運用会社
投資法人はその資産の運用を外部に委託する必要があります。
資産運用会社は、内閣総理大臣の登録を受けた金融商品取引業者でなければならず、
運用資産に不動産が含まれる場合、宅建免許が必要です。
さらに、主として不動産に対する投資として運用することを目的とする投資法人の資産の運用を行う場合は、
取引一任代理等の認可を必要とします。
また、資産運用会社は、複数の投資法人から受託が可能ですが、
利益相反の問題等もあるため大半の資産運用会社は1つの投資法人の資産運用業務のみを行っています。
(なお、資産運用会社の代表者が受託先の投資法人の執行役員に就任する事は特に禁止されていません。)
利益相反の問題等に関する方策として資産運用会社の親法人から投資法人が不動産を取得する場合、
資産運用会社はその取引に先立ち、自社の社内規定に基づく意思決定プロセスに沿って審議及び決議をする必要があります。
資産運用会社の選定は投資主の決議事項に含まれますが、一般的に投資法人の登録に先行して資産運用会社は決定するので、
投資主が資産運用会社との委託契約締結に関して議決権を行使する事はレアケースです。
・利害関係人の範囲について
投資法人の資産運用会社及びその取締役、会計参与、監査役、執行役員、使用人
投資法人の執行役員、監督役員及びその親族
これらの利害関係人については不動産取引に関して規制があります。
(資産運用会社の子会社は規制対象ではありませんので混同しない様注意が必要です。)
★投信法には「インサイダー取引規制」がありません。(金商法で縛っているため)
★投資法人の導管性要件:事業年度終了時に50人以上or機関投資家のみで投資口を保有している事、
特定資産の帳簿価額が総資産の2分の1相当額を超えている事
・資産流動化の定義
「資産の流動化」とは一連の行為として、
特定目的会社が資産対応証券の発行若しくは特定借入れにより得られる金銭をもって資産を取得し、
資産の管理及び処分により得られる金銭をもって、資産対応証券、特定借入れ又は出資について同法に定める行為を行うことをいう。
(資産流動化法第2条2項 抜粋)
TMK(特定目的会社)
資産流動化法に基づき、その資産の流動化のみを目的とする法人です。
投資法人と同じく、他の業務を営むことは出来ない(他業禁止)とされています。
このように、TMKは既に資産流動化法による制約を受けていますので、宅建業法の適用を受けません。
(資産流動化の為に作られるのがTMKですので、「売主なので宅建免許不要」というニュアンスです。)
モノありきのスキームですので特定資産の追加は従来出来ませんでしたが、平成23年度改正法に伴い、
利害関係人全員の承諾を得て資産流動化計画(ALP)変更の届出をすることで追加できるようになりました。
この時、現物不動産を追加資産とする場合は既存の特定不動産との密接関連性が必要です。
つまり、信託受益権を追加資産とする場合は密接関連性は必要ありません。
また、TMKが信託受益権に投資する場合は自己運用行為に当たりませんが、GKの場合は自己運用行為となります。
理由として、自己運用行為とは、
金商法上の集団スキーム持分(例:TK出資持分)を有する者から出資を受けた者が信託受益権に投資した場合等を指しているため、
資産流動化法を根拠法とするTMKは該当せず、GKの場合は該当する、という事です。
特定資産(信託受益権を除く)を取得、賃貸、分配する場合特定資産管理処分受託者に対して業務委託する必要があります。
特定目的会社には「特定社員」と「優先出資社員」が存在し、特定社員の権利は劣後します。
・特定出資:発起人の出資(特定社員。議決権アリ、譲渡制限アリ)
・優先出資:特定出資より優先される(優先出資社員。議決権ナシ、譲渡制限ナシ)
※優先社員に議決権は無いものの、TMKが投資助言契約を締結する場合、優先出資社員が投資判断を行う建付にすることに問題は無い。
特定出資は必ず発行する必要があります。
優先出資は任意です。また、優先出資社員は金銭以外の財産による出資は出来ません。
特定借入の借入先は適格機関投資家、銀行に限定されています。
特定目的会社の発行する証券は「第一種金融商品」として扱われます。
特定目的会社の場合、届出により(金融商品取引業者の登録は不要)「自己募集」が可能です。
(特定目的会社に特定資産を譲渡する者は優先出資証券の私募の取り扱いが可能ですが、金商法上の届出が必要です。)
このとき、オリジネーターが優先出資の勧誘行為は出来ますが、
特定目的会社の取締役や監査役に就任する事は出来ない点に注意が必要です。
※特定目的会社は関連者などに係る純利子支払等の課税の特例適用対象から除外されています。
※特定目的会社は資本金1億円以下の中小企業に認められている法人税の軽減税率適用がありません。
・特定目的会社は取得物件の売買契約締結後に業務開始の届出をする必要があります。
・特定目的会社は資産の流動化に係る業務を行うときはあらかじめ資産流動化計画を監督官庁に届け出なければなりません。
・資産の流動化に係る業務が終了(優先出資への配当や債務履行を終える)した場合は30日以内に終了届出をする必要があります。
・資産流動化計画において予定されている資産の入れ替えは反復継続とはみなされないとされています。
組合契約とは主流なエクイティの調達方法になります。
組合員持分は「集団投資スキーム持分」と呼ばれ、「みなし有価証券」に分類されます。(第二種金融商品取引業)
・任意組合(民法)
出資財産は任意組合の財産になります。(出資に応じた持分を取得)
つまり組合員の共同事業であり、割り勘で不動産オーナーになるイメージです。
よって組合の債務について無限責任を負います。
組合員と業務執行組合員で構成され、常務については各組合員が単独で、
対外的代表権を有するのは業務組合員となります。
・匿名組合(商法)
出資財産について組合員自体は持分を持たず、処分権も有しません。
営業者の単独事業に対して出資する株主のようなニュアンスです。
また、業務執行権もありません。(営業者に業務を任せます)
よって、匿名組合員の損失負担は出資した財産の範囲内に限られます。(有限責任)
また、匿名組合の債権者は、匿名組合員個人に対して請求することは出来ません。
また、匿名組合員が破産手続開始の決定を受けた場合は匿名組合契約は終了し、出資価額の請求権のみが残ります。
(この場合、事業の終了までは出資価額の返還がなされない劣後特約が附帯される場合がほとんどです。)
匿名組合員が個人の場合、受け取る利益は雑所得になります。
業務執行権、対外的代表権は営業者のみが有します。
・投資事業有限責任組合(有責組合)(特別法)
機関投資家用の組合事業です。現物不動産の取得、売買はできません。
(集団投資スキームや信託受益権は可能です。)
※有限責任組合員と無限責任組合員が混在し、無限責任組合員が業務執行します。