業界人向けに各種資格試験から情報を提供しています。

不動産まめ知識ストレージ📚

鑑定理論

不動産鑑定評価基準 総論第7章-鑑定評価の方式- Vol.2(取引事例比較法)

 

 

 

取引事例比較法

 

 

多数の取引事例(取引価格が把握できる事例)を収集し、適切な事例の選択を行い、必要に応じて事情補正及び時点修正を行い、

地域要因・個別的要因の比較を行って求められた価格を比較考慮し、試算価格を求める手法。(比準価格)

事情補正から比較考慮までのフローを総称して「比準」という。

取引事例は成約事例のみならず、売り希望価格、買い希望価格、精通者の意見等幅広く収集する必要がある。

取引事例の精度が比準価格の精度に直結する。

 

・事情補正が必要な取引事例(特殊な事情)

減額:特殊な使用方法を前提とした取引、過度に楽観的な見通しの下行われた取引等。

増額:相続等による売り急ぎの取引等。

増額又は減額:不相応な造成費・修繕費を考慮した取引、競売等によって成立した取引等。

 

・時点修正

事例に係る不動産の存する用途的地域と相似の価格変動過程を経たと認められる類似の地域における土地又は建物の価格の変動率(時点修正率)を求め、取引価格を修正する。

時点修正率は価格時点以前に発生した取引事例について時系列的な分析を行い、一般的要因の動向を総合的に勘案して求める。

適切な取引事例が乏しい場合は成約事例のみならず、地価公示・都道府県地価調査等をはじめ、売り希望価格・買い希望価格等の動向を参考として用いる事ができる。

 

・地域要因、個別的要因の比較

直接的:取引事例と対象不動産を直接比較する方法。

間接的:個別的要因が標準的な土地を設定してそのエリアの特性と比較する方法。

(取引事例も対象不動産も個性が強すぎるという場合に、極々標準的な土地を介在させる事で両者の個性を明確化し、比較しやすくするのが間接的比較という事。)

 

・配分法

配分法は複合不動産の取引価格と、対象不動産の同類型の不動産以外の部分の「価格」や「価格割合」が判明している場合に有効な方法。

控除法:土地建物のうちいずれかの取引価格が判明している場合にそれを控除し価格を求める。

割合法:価格割合が判明している場合にそれを乗じて価格を求める。

 

 

◆論点◆

 

・事例選択4要件

取引事例は次の要件の全部を備えるもののうちから選択するものとする。

(1)次の不動産に係るものであること

近隣地域又は同一需給圏内の類似地域若しくは必要やむを得ない場合には近隣地域の周辺の地域(同一需給圏内の類似地域等)に存する不動産

②対象不動産の最有効使用が標準的使用と異なる場合において同一需給圏内に存し対象不動産と代替、競争の関係が成立していると認められる不動産(同一需給圏内の代替競争不動産

不動産は属する用途的地域の特性の制約の下で、他の不動産と相互に代替、競争の関係にたち、その相互関係を通じて個別に価格が形成される。このように、用途的地域内に存する不動産は密接な価格牽連性を有する。

したがって近隣地域内や同一需給圏内の類似地域内に存する不動産に係る取引事例は対象不動産の価格を求めるに当たって指標となる。

また、近隣地域の制約の程度が著しく小さいと認められる場合の取引事例の選択に当たっては、近隣地域の特性との類似性よりも、個々の不動産の用途、規模、品等等の類似性に着目した方が有用となる場合が多い。

したがって、上記の場合には地域にとらわれず、同一需給圏内に存し対象不動産と代替、競争等の関係が成立していると認められる不動産に係る取引事例等を選択すべきである。

(2)取引事例等に係る取引の事情が正常なものと認められるものであること又は正常なものに補正することができるものであること

正常な事情に基づいて成立した取引事例等は鑑定評価にあたって価格の指標となり得るが、特殊な事情を含む取引事例もまた、適切な事情補正を行うことで価格の指標となり得る。

(3)時点修正をすることが可能なものであること

価格形成要因は時の経過により変動するものであるから、不動産の価格はその判定の基準となった日(価格時点)においてのみ妥当とするものである。

したがって、鑑定評価にあたって価格の指標となり得る取引事例等は価格時点と同一時点のもの又は時点修正が可能なものである必要がある。

(4)地域要因の比較及び個別的要因の比較が可能であること

鑑定評価にあたって価格の指標となり得る取引事例等は、それに係る不動産が対象不動産と地域要因及び個別的要因について、同一の価値尺度で比較が可能なものでなければならない。

 

・同一需給圏の代替競争不動産

取引事例等は次の不動産に係るもののうちから選択するものとする。

①近隣地域又は同一需給圏内の類似地域若しくは必要やむを得ない場合には近隣地域の周辺の地域(同一需給圏内の類似地域等)に存する不動産

②対象不動産の最有効使用が標準的使用と異なる場合において同一需給圏内に存し対象不動産と代替、競争の関係が成立していると認められる不動産(同一需給圏内の代替競争不動産)

対象不動産の最有効使用が標準的使用と異なる場合等においては、近隣地域の制約の程度が著しく小さいと認められることから、取引事例等の選択に当たっては、近隣地域の特性との類似性よりも個々の不動産の用途、規模、品等等の類似性に着目した方が有用となる場合が多い。

したがって、上記の場合には地域にとらわれず、同一需給圏内に存し対象不動産と代替、競争等の関係が成立していると認められる不動産に係る取引事例等を選択すべきである。

また上記の場合において選択する同一需給圏内の代替競争不動産に係る取引事例等はいわゆる事例選択4要件の他、次に掲げる事項に該当するものでなければならない。

I:対象不動産との間に用途、規模、品等等の類似性が明確に認められること

II:対象不動産の価格形成に関して直接に影響を与えていることが明確に認められること

取引事例の価格等は、その不動産の存する用途的地域に係る地域要因及び当該不動産の個別的要因を反映しているものであるから、取引事例等に係る不動産が同一需給圏内の代替競争不動産である場合においては、近隣地域と当該事例に係る不動産の存する地域との地域要因の比較及び対象不動産と当該事例に係る不動産との個別的要因の比較を行う必要がある。

対象不動産の最有効使用が標準的使用と異なる場合等であっても近隣地域の影響を少なからず受けるので、個別的要因の比較だけでなく地域要因の比較もあわせて行う事に留意すべきである。

 

・事情補正の必要性

不動産の価格を求める鑑定評価の基本的な手法は原価法、取引事例比較法、収益還元法に大別される。

鑑定評価の各手法の適用に当たって必要とされる事例には、原価法では建設事例、取引事例比較法では取引事例、収益還元法では収益事例(取引事例等)がある。

不動産の鑑定評価とは、現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる市場で形成されるであろう市場価値を表示する適正な価格を、不動産鑑定士が把握する作業に代表されるものであるため、

選択する取引事例等は正常な事情の下で成立したものであることが望ましい。しかし、現実に成立した取引事例等には、不動産市場の特性、取引等における当事者双方の能力の多様性と特別の同期により売り急ぎ、買い進み等の特殊な事情が存在する場合もあり、正常な事象の下で成立した取引事例等しか選択できないとすると多数の取引事例等の収集が困難となる。

そこで、特殊な事情を含む取引事例であっても正常なものに補正することが出来るものであるならば、選択することが可能とされている。したがって、取引事例等に係る取引等が特殊な事情を含み、これが当該取引事例等に係る価格等に影響を及ぼしている場合は適切に補正(事情補正)しなければならない。

なお、特殊な事情とは正常価格を求める場合であれば正常価格の前提となる現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる諸条件を欠くに至らしめる事情の事であり、以下のような事情が考えられる。

①補正に当たり減額すべき特殊な事情

営業上の場所的限定等特殊な使用方法を前提として取引が行われたとき。

極端な供給不足、先行きに対する過度に楽観的な見通し等特異な市場条件の下に取引が行われたとき。

業者又は系列会社間における中間利益の取得を目的として取引が行われたとき。

買手が不動産に関し明らかに知識や情報が不足している状態において過大な額で取引が行われたとき。

取引価格に売買代金の割賦払いによる金利相当額、立退料、離作料等の土地の対価以外のものが含まれて取引が行われたとき。

②補正に当たり増額すべき特殊な事情

売主が不動産に関し明らかに知識や情報が不足している状態において、過少な額で取引が行われたとき。

相続、転勤等により売り急いで取引が行われたとき。

③補正に当たり減額又は増額すべき特殊な事情

金融逼迫、倒産時における法人間の恩恵的な取引又は知人、親族間等人間関係による恩恵的な取引が行われたとき。

不相応な造成費、修繕費等を考慮して取引が行われたとき。

調停、清算、競売、公売等において価格が成立したとき。

 

・時点修正の必要性

価格形成要因は時の経過により変動するものであるから、不動産の価格はその判定の基準となった日(価格時点)においてのみ妥当するものであるため、選択する取引事例等は価格時点と同一時点であるものが望ましい。しかし、現実にはそのような取引事例を選択することは困難である。そこで、取引事例等の収集範囲を広げるために、価格時点と異なる取引事例等であっても時点修正をすることが可能なものであるならば、選択できるとされている。したがって取引事例等に係る取引等の時点が、価格時点と異なることにより、その間に価格水準に変動があると認められる場合には、当該取引事例等の価格等を価格時点の価格等に修正(時点修正)しなければならない。

時点修正に当たっては、事例に係る不動産の存する用途的地域又は当該地域と相似の価格変動過程を経たと認められる類似の地域における土地又は建物の価格の変動率を求め、これにより取引価格を修正すべきである。

時点修正率は社会的、経済的要因の変化や行政的変化等の一般的要因の動向を総合的に勘案して求めるべきであるが、地価公示等の資料を活用するとともに適切な取引事例等が乏しい場合には売り希望価格、買い希望価格等の動向及び市場の需給の動向等に関する諸資料を参考として用いることができるものとする。

-鑑定理論

Copyright© 不動産まめ知識ストレージ📚 , 2024 All Rights Reserved Powered by AFFINGER5.