不動産鑑定「業者」が「依頼者」から鑑定依頼を受付、
「業者」が「鑑定士」に「鑑定評価報告書」を作成させ、
「業者」が鑑定評価報告書を元に「鑑定評価書」を作成し、「依頼者」へ提出する。
※鑑定評価報告書は「内部文書」なので鑑定士の署名押印は不要。
必要的記載事項とされているものは依頼者から口頭で説明された事項や周知の事項であっても記載しなければならない。
下記12事項は最低限の記載事項であり、これに加えてその他事項を記載することは差支えない。
1.鑑定評価額又は賃料の種類
正常価格又は正常賃料を前提としており、
限定価格・特定価格、限定賃料等がある場合は正常価格、賃料と併記しなければならない。
また、支払賃料と実質賃料についても併記する必要がある。
ただし、「特殊価格や継続賃料」といった「市場性を有しない価格・賃料」についての併記は求められていない。
2.鑑定評価の条件
対象確定条件、想定上の条件、調査範囲等条件の根拠を明らかにし、
必要な場合は当該条件が「設定されない場合の価格等の参考事項」を記載すべきとしている。
3.対象不動産の所在、地番、地目、家屋番号、構造、用途、数量等及び権利の種類
4.対象不動産の確認に関する事項
確認資料との照合結果を明確に記載しなければならない。(実地調査の年月日、調査した鑑定士の氏名、立会人の氏名及び職業等)
5.鑑定評価の依頼目的及び依頼目的に対応した条件と価格又は賃料の種類と関連
特定価格を求めた場合の法令等による社会的要請の根拠等。
6,価格時点及び鑑定評価を行った年月日
時系列:依頼日→価格時点→実地調査→鑑定評価
7.鑑定評価額の決定の理由の要旨
地域分析及び個別分析に係る事項(一般的要因、類似地域は鑑定評価書記載事項ではない)
最有効使用の判定に関する事項(建物及びその敷地の場合は更地としての最有効使用も記載)
鑑定評価の手法の適用に関する事項(適用手法と市場の特性の関係を記載)
試算価格又は試算賃料の調整に関する事項
公示価格との規準に関する事項
対象不動産に関する争訟等の取り扱いに関する事項
支払賃料と実質賃料の関連に関する事項(直近合意時点についても記載)
8.不明事項が存する場合の取り扱いの記載
9.関与不動産鑑定士及び関与不動産鑑定業者に係る利害関係等
10.関与不動産鑑定士の氏名
(不備等をチェックしたに過ぎない鑑定士の氏名は「関与」ではないので記載しない。)
11.依頼者及び提出先等の氏名又は名称
12.鑑定評価額の公表の有無について確認した内容
(公表の有無が未定の場合はその旨を記載。)
附属資料
事例資料等は必要に応じて添付する。
他の専門家が行った調査結果等を活用するために入手した資料についてもやはり「必要に応じて」添付する。
・価格又は賃料の種類を記載する理由
鑑定評価報告書は、不動産の鑑定評価の成果を記載した文書であり、不動産鑑定士が自己の専門学識と経験に基づいた判断と意見を表明し、その責任を明らかにすることを目的とするものである。
鑑定評価報告書には少なくとも「鑑定評価額及び価格又は賃料の種類」等の事項について記載しなければならない。
鑑定評価は、鑑定評価額を求めることを目的とした作業であるからこれを記載すべきことは当然である。
また、価格又は賃料の種類を記載するのはどのような条件に基づいて価格又は賃料を求めたかを明確にし、他の条件下で算定された価格や賃料との無用の混乱を避けるためである。
正常価格又は正常賃料を求めることができる不動産について、依頼目的に応じた条件により限定価格又は限定賃料、特定価格又は特定賃料を求めた場合はかっこ書きで正常価格又は正常賃料である旨を付記してそれらの額を併記しなければならない。なお、特殊価格は一般的に市場性を有しない不動産について、継続賃料は市場参加者が限定された不動産について求めるものであるから正常価格又は正常賃料を併記することは求められていない。
・価格時点及び評価時点を記載する理由
鑑定評価報告書は、不動産の鑑定評価の成果を記載した文書であり、不動産鑑定士が自己の専門学識と経験に基づいた判断と意見を表明し、その責任を明らかにすることを目的とするものである。
鑑定評価報告書には少なくとも「価格時点及び鑑定評価を行った年月日」等の事項を記載しなければならない。
価格形成要因は時の経過により変動するものであるから、不動産の価格はその判定の基準となった日においてのみ妥当とするものである。
したがって、不動産の鑑定評価を行うに当たっては不動産の価格の判定の基準日を確定する必要があり、この日を価格時点という。よって鑑定評価報告書には価格時点を記載しなければならない。
また、鑑定評価を行った年月日(評価時点)とは鑑定評価の手順を完了した日、つまり鑑定評価報告書に鑑定評価額を表示した日である。これを記載する理由は価格時点と評価時点との時間的乖離が価格形成要因の分析に影響し、鑑定評価額に影響する場合があるため、評価時点において当該鑑定評価額を決定したことを後日立証する為である。したがって鑑定評価報告書には評価時点を記載しなければならない。