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鑑定理論

不動産鑑定評価基準 各論第3章-証券化不動産の価格に関する鑑定評価-

 

 

★証券化不動産の鑑定評価は各論第3章の定めるところに従って行わなければならない。従わない場合は不当鑑定となる。再評価についても同様。

 

証券化不動産以外でも大型賃貸不動産の鑑定評価であって、必要な場合はこの章の定めに準じて鑑定評価を行うよう努めなければならない。

 

・証券化対象不動産の範囲

資産流動化法、投信法、不動産特定共同事業法、金融商品取引法に規定する不動産取引。

不動産取引には売買だけでなく、出資・貸付・債権の購入といった資金調達」に関わる行為も含まれる。

これから証券化される不動産も適用対象となる。

 

・複数の不動産鑑定士が共同して行う場合

鑑定評価書に署名をする全ての鑑定士が鑑定評価全体について責任を負う。

 

・処理計画策定時の確認事項

1.鑑定評価の依頼目的、依頼が必要となった背景

2.対象不動産が証券化不動産に含まれるかどうか

3.エンジニアリングレポート(ER)、DCF法適用のための資料、その他資料の項目及び入手時期

4.ER作成者からの説明有無

5.実地調査・内覧の範囲

6.その他処理計画策定のために必要な事項

★ERの具体例として「建物状況調査報告書」「建物環境調査報告書」「土壌汚染リスク評価報告書」「地震リスク評価報告書」等が挙げられる。

※処理計画策定時の確認において資料の提出等について依頼者と交渉を行なった場合はその経緯を記録しなければならない。

確認事項の記録は鑑定評価報告書の附属資料として添付するが、鑑定評価書への添付までは要求されていない。保管義務はある

資料の入手や実地調査が複数回行われる場合は「各段階ごと」の確認及び記録が必要。

 

・個別的要因の調査等

 実地調査

実地調査の年月日、調査した鑑定士の氏名、立会人、「対象不動産の管理者」氏名及び職業、

実地調査を行った範囲(内覧の有無)と内容、実地調査の一部を実施できなかった場合はその理由。

 

・ERの取扱

不動産鑑定士は依頼者に対してERの提出を求め、活用しなければならない。

ただし、ER提出がない場合や鑑定評価資料が不足する場合はERに代わるものとして鑑定士が調査を行うなどして鑑定評価報告書に記載しなければならない。

ERは不動産鑑定評価の為に作成されているわけではないので、内容不十分な場合がある。

 ER記載内容

遵法性、修繕計画、再調達価格、有害物質、土壌汚染、地震リスク(PML値)、耐震性、地下埋設物

※ERの再調達価格には、不動産鑑定評価基準の「再調達原価」に含まれる「設計監理料」は含まれていないことに注意。

※ERの作成者は調査の「受託者」であり、調査の委託者の氏名も鑑定評価報告書に記載する必要がある事に注意。

 

・DCF法の適用

証券化不動産の収益価格はDCF法を適用しなければならないが、直接還元法を適用する事で検証を行う事が適切である。

※依頼者の提供資料は適宜修正を加えて活用する。

 

 収益費用項目の統一

他の不動産鑑定業者の提出する鑑定評価書との「比較容易性の向上」をさせる為に収益費用項目の統一化が図られている。

 

 運営収益

 

貸室賃料収入、共益費収入、水道光熱費収入(賃借人から徴収)

★これらの収入は「満室想定」を求める。

駐車場収入、その他収入(礼金・更新料・アンテナ自販機・・)

空室等損失、貸倒損失(収益控除項目)

※礼金、更新料等の一時金は既受領のものは計上せず、新たに受領予定のものを計上する。

※空室等損失、貸倒損失は収入項目毎に想定、算出する必要がある。

 

 運営費用

 

維持管理費(BM)水道光熱費、修繕費(Opex)、PMFee、テナント募集費用等

公租公課、損害保険料(主に火災保険で地震保険は任意加入であり稀。)

その他費用(支払地代、道路占用使用料、管理費・修繕積立金等)

 

 運営純収益(NOI)

 

運営収益-運営費用に下記の項目を加減することで「純収益」を求める。

一時金の運用益、資本的支出(CAPex)

※収益費用項目にはAMFeeや信託報酬といった「証券化関連費用」は含まない。

減価償却費は計上しない。償却前のものとして純収益を求める。建物等の償却については復帰価格において考慮される。

 

 

◆論点◆

 

・証券化対象不動産の範囲

証券化対象不動産とは、次のいずれかに該当する不動産取引の目的である不動産又は不動産取引の目的となる見込みのある不動産(信託受益権に係るものを含む)をいう。

1)資産の流動化に関する法律に規定する資産の流動化並びに投資信託及び投資法人に関する法律に規定する投資信託に係る不動産取引並びに同法に規定する投資法人が行う不動産取引

2)不動産特定共同事業法に規定する不動産特定共同事業契約に係る不動産取引

3)金融商品取引法に規定する有価証券及び有価証券とみなされる権利の債務の履行を主たる目的として収益又は利益を生ずる不動産取引

上記の不動産取引は売買だけでなく、出資、貸付、債権等の購入等の資金調達に関わる行為を含むものである。

また、見込みのある不動産とは、上記に掲げる取引を行う事が予定されている、又は依頼者等が当該取引を行うことを意図している場合における取引の目的となっている不動産を指すものであり、これから証券化される不動産をも適用対象とする趣旨である。

証券化対象不動産の鑑定評価は、各論第3章の定めるところに従って行わなければならない。また、証券化対象不動産については、従前に鑑定評価が行われたものを再評価する場合であっても、各論第3章に従って鑑定評価を行わなければならないものであることに留意する必要がある。

なお、証券化対象不動産以外の不動産の鑑定評価を行う場合にあっても、投資用の賃貸大型不動産の鑑定評価を行う場合、その他の投資家及び購入者等の保護の観点から必要と認められる場合には、各論第3章の定めに準じて鑑定評価を行うよう努めなければならない。

証券化対象不動産に該当し、各論第3章を適用して鑑定評価を行った場合には、鑑定評価報告書にその旨を記載しなければならない。

 

・ERの活用

証券化対象不動産とは、資産の流動化に関する法律に規定する資産の流動化に関わる不動産取引など証券化に関連する不動産取引の目的である不動産等をいい、

その鑑定評価は各論第3章の定めるところに従って行わなければならない。

エンジニアリング・レポート(ER)とは、建築物、設備等及び環境に関する専門的知識を有する者が行った証券化対象不動産の状況に関する調査報告書をいう。

証券化対象不動産の価格は、将来キャッシュフローの現在価値として把握される収益価格を重視して判断されることから、建物を中心にそのキャッシュフローに影響を与えるリスク要因のチェックが肝要となり、投資家保護の観点から価格形成要因の分析に当たり、他の専門家の調査結果を十分吟味して活用していく事が求められる。

そのため、証券化対象不動産の鑑定評価に当たっては、不動産鑑定士は依頼者に対し、必要なERの提出を求め、その内容を分析・判断した上で鑑定評価に活用しなければならない。

ただし、ERの提出が無い場合又はその記載された内容が鑑定評価に活用する内容として不十分であると認められる場合等には、ERに代わるものとして不動産鑑定士が調査を行うなど鑑定評価を適切に行うため対応するものとし、対応した内容及びそれが適切であると判断した理由について、鑑定評価報告書に記載しなければならない。

既存のERの活用で対応できる場合がある一方、ERは投資判断等の目的で作成されるものであり、鑑定評価の目的で作成されるものではないため、ERが形式的に項目を満たしていても、鑑定評価にとって不十分で、不動産鑑定士の調査が必要となる場合もある。

ERを活用するか否かの検討に当たっては、その判断および根拠について鑑定評価報告書に記載しなければならない。

 

・専門性の高い個別的要因が古いERをベースとする場合の留意点

個別的要因とは、不動産に個別性を生じさせ、その価格を個別的に形成する要因をいう。

鑑定評価に必要となる専門性の高い個別的要因に関する調査項目としては、

①公法上及び私法上の規制、制約等

②修繕計画

③再調達価格

④有害な物質に係る建物環境

⑤土壌汚染

⑥地震リスク

⑦耐震性

⑧地下埋設物 が挙げられる。

エンジニアリング・レポート(ER)とは、建築物、設備等及び環境に関する専門的知識を有する者が行った証券化対象不動産の状況に関する調査報告書をいう。

証券化対象不動産の鑑定評価に当たっては、不動産鑑定士は依頼者に対し、必要なERの提出を求め、その内容を分析・判断した上で鑑定評価に活用しなければならない。

ただし、ERの提出が無い場合又はその記載された内容が鑑定評価に活用する内容として不十分であると認められる場合等には、ERに代わるものとして不動産鑑定士が調査を行うなど鑑定評価を適切に行うため対応するものとする。

ERの調査内容は基本的に調査時点でのみ有効であるものと考えられ、どの程度過去のものまで利用できるかは対象不動産の状況の変化等を勘案して不動産鑑定士が判断する必要がある。

 

①公法上及び私法上の規制

新築時の遵法性については、作成時点が古いERであっても活用する事ができるが、作成時点から価格時点までの間に増改築や用途変更等によって現状の建築基準法等に不適合な建物となっている場合があるため、活用に当たってはその点に留意すべきである。

②修繕計画

賃貸事務所ビルの経年により作成時点が古いERおおける修繕計画が現況の対象不動産の運用として予定されている修繕計画と相違する場合もあるため、不動産鑑定士が適切に判断する必要がある。

③再調達価格

ERの作成時点と価格時点との間において建設資材等の価格水準に変動がある場合には作成時点が古いERにおける再調達価格を時点修正して活用する必要がある。

④有害な物質に係る建物環境

建設資材としてのアスベストの使用の有無やPCBの使用状況については、作成時点が古いERでも把握する事が可能だが、アスベストの飛散防止等の措置の実施状況やPCBの保管状況については作成時点から状況が変化していることもあることに留意すべきである。

⑤土壌汚染について

ERの作成時点から価格時点までの間に汚染の除去等の措置が行われている場合もあることに留意すべきである。

⑥地震リスクについて

時の経過によりPML値等、地震リスク分析結果が変化することもあるため、あまりにも作成時点が古いERは活用すべきでない。

⑦耐震性について

ERの作成時点から価格時点までの間に耐震補強工事がなされている場合には作成時点が古いERを活用すべきでない。

⑧地下埋設物について

地下埋設物は従前建物の基礎杭など証券化対象不動産に係る建物が建設される以前のものが大半を占める多恵、作成時点が古いERも活用できることが多い。

 

・直接還元法及びDCF法の適用について

証券化対象不動産とは、資産の流動化に関する法律に規定する資産の流動化に関わる不動産取引など証券化に関連する不動産取引の目的である不動産等をいい、

その鑑定評価は各論第3章の定めるところに従って行わなければならない。

収益還元法は対象不動産が将来生み出すであろうと期待される純収益の現在価値の総和を求めることにより対象不動産の試算価格(収益価格)を求める手法である。

収益価格を求める方法には、一期間の純収益を還元利回りによって還元する直接還元法と、連続する複数の期間に発生する純収益及び復帰価格をその発生時期に応じて現在価値に割引き、それぞれを合計するDCF法がある。

証券化対象不動産の鑑定評価においては、投資家保護の観点から対象不動産の収益力を適切に反映する収益価格に基づいた投資採算価値を求める必要がある。

この点、標準的な投資家は開示される資産流動化計画等の対象不動産の運用計画に基づく一定期間の保有による収益と転売による収益を投資採算価値の判断基準としていると考えられる。

そのため、証券化対象不動産の鑑定評価における収益価格を求めるに当たっては、収益価格を求める過程について説明性に優れた、DCF法を適用しなければならない。この場合において、併せて直接還元法を適用することにより検証を行うことが適切である。

 

・DCF法の収益費用項目

証券化対象不動産とは、資産の流動化に関する法律に規定する資産の流動化に関わる不動産取引など証券化に関連する不動産取引の目的である不動産等をいい、

その鑑定評価は各論第3章の定めるところに従って行わなければならない。

DCF法とは、連続する複数の期間に発生する純収益及び復帰価格を、その発生時期に応じて現在価値に割り引き、それぞれを合計して収益価格を求める方法をいう。

証券化対象不動産の鑑定評価における収益価格を求めるに当たっては、収益価格を求める過程について説明性に優れた、DCF法を適用しなければならない。

DCF法の適用により収益価格を求めるに当たっては、証券化対象不動産に係る収益又は費用の額につき、連続する複数の期間ごとに収益費用項目に区分して、鑑定評価報告書に記載しなければならない。

収益費用項目の全体の構成としては、運営収益から運営費用を控除して得た運営純収益一時金の運用益を加算資本的支出を控除した額として純収益を査定する。

運営収益は、貸室賃料収入・共益費収入・水道光熱費収入・駐車場収入・その他収入を加算した額から、空室等損失・貸倒損失を控除して求めるものとし、総論第7章の総収益の内一時金の運用益を含まない。

運営費用は、維持管理費・水道光熱費・修繕費・プロパティマネジメントフィーテナント募集費用等・公租公課・損害保険料・その他費用を加算して求めるものとし、総論第7章の総費用の内大規模修繕費(資本的支出)を含まない。

収益費用項目に運営純収益を表示する理由は、企業会計における営業損益と類似した概念で投資家に開示する事が有用であることによる。

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