機関投資家とは個人投資家とは比にならない巨額の資金運用を行う投資家です。
大手生命保険会社ではオフィスビルの開発をした後、一部を自己利用し、残りを賃貸オフィスにするといった不動産運用が多いです。
しかしながら上記の運用手法は不動産投資としての利回り低下要因にもなるため、
*ソルベンシー・マージン比率の規制厳格化も相まって各保険会社はより高利回り、好立地の不動産への入れ替えに取り組んできました。
よって近年では投資用不動産としての現物不動産の保有も増えております。
また、生命保険会社は損害保険会社に比べて国債への投資配分が高いです。(損保に比べて保険金の払い出しスパンが長く、長期運用が可能であるため)
*ソルベンシー・マージン比率:大災害や株の大暴落など、通常の予測を超えて発生するリスクに対応できる「支払余力」を有しているかどうかを判断するための行政監督上の指標の一つ。
生命保険会社と比較して有事の際の支払いが多額且つ突発的である損保会社では、
流動性リスクの軽減が重視されているため、
不動産投資への割合は低く、預貯金の割合が多くなっています。
そこで、流動性リスクの低い不動産証券化商品への投資が注目されています。
年金積立管理運用独立行政法人(GPIF)や共済年金、確定拠出年金以外の企業年金(確定拠出年金は運用指図者が個人の為)は、
生命保険と比較して長期的な運用と長期的且つ安定したリターンが必要とされるため、不動産投資商品との相性が良いです。
したがって、企業年金は不動産を主要投資先に据えており、運用目標(予定利率)から逆算して投資対象内容を決めています。
アセットタイプは物流・オフィス・住宅の準に割合が大きくなっています。
★企業年金の不動産投資が増加する中、GPIFは世界トップレベルの資産運用規模となっているものの、
不動産投資の割合は他国と比較し、依然として少なくなっています。
しかし、2018年から海外不動産投資を開始し、今後のアウトバウンド投資の拡大が見込まれています。
確定給付企業年金は信託会社以外にも、生命保険会社への保険料払込や農協への共済掛金払込といった運用方法も盛り込んでいるのに対し、
公的年金(共済制度)は預金と信託会社への信託が主な運用方法となっています。
しかしながら、双方共に不動産私募ファンドへの運用なども増えてきています。
同様に、海外不動産プライベートファンドへの投資も増加傾向にあります。
また、アセットタイプ別で比較すると近年では物流施設への投資割合がオフィスを上回っています。
ポートフォリオの8%前後を不動産が占めており、
資産規模の大きい基金は直接投資が約4割、小さい基金は約2割で、その他にファンド投資や共同投資が組み込まれています。
アセットタイプはオフイス、レジデンス、商業施設の順で保有しており、
7割弱はコア投資(売却益ではなく賃料等収入によるインカムゲインを狙う投資)です。
また、そのうちオフィスの比率は4分の1程度となっています。
(米国公務員年金基金は企業年金よりも大規模なものが多く、予定利率が7%程度なのに対し国内確定給付型企業年金の予定利率は2%程度となっています。)
預貯金を扱う銀行は機関投資家の中でも自己資本比率や運用方法に関する規制がかなり厳しいです。
しかしながら不動産証券化商品の中でも上場REITは組み込みやすい投資商品という位置づけです。
(流動性リスク、分散投資の観点から)
さらには私募REITへの投資も増加傾向にあります。
(そもそも、銀行は不動産証券化(流動化目的のSPV)向けにデットファイナンスを行っているので不動産証券化とは密接な関係ですね。)
海外の機関投資家も日本国内の不動産投資を行っており、J-REIT等にとって重要な存在です。
証券化の歴史においては、90年代後半、大量の不良債権に対する担保不動産のバルクセールに外資が流れ込んできたことが証券化スキーム発展のきっかけとなりました。
★機関投資家が不動産投資(不動産証券化商品への投資)をポートフォリオに組み入れる理由としては、
・株価の値動きに対する相関性が低いこと
・インフレに強いこと
・キャッシュフローが安定していること
の3点が主な理由です。
(個人投資家にも当てはまる理由ではありますが、現物不動産の場合はレバレッジ効果、証券化商品の場合は分散投資効果を期待する投資家が多いのではないでしょうか。)
●ちなみに非上場企業でも、有価証券の残高が10億円以上であれば「適格機関投資家」になることができます。
(適格機関投資家の投資残高には不動産証券化等のみなし有価証券も含まれています。)
適格機関投資家はプロ中のプロとして扱われるため、通常投資家への交付義務が課される「目論見書」の交付義務がありません。