不動産証券化とは不動産の持ち主がSPVに売却し、資金調達をするスキームです。
ここではSPVの種類別に解説していきます。
①特定目的会社(TMK) スキーム
オリジネーター(対象不動産保有者)が特定目的会社へ対象不動産を売却し、証券を発行、オリジネーターが資金調達をするスキーム。
資産流動化法に基づいて行う。つまり、特定目的会社が発行する証券も金商法上の有価証券に分類され、情報開示も求められる。
資産の管理・処分は外部委託しなければならない(信託会社など)現物不動産、信託受益権双方保有が可能。
匿名組合出資持分の保有は出来るが、匿名出資による資金調達はできない。
(匿名出資はGK-TKスキームで。)
特定目的会社は一定要件(利益の90%超を配当金に充てる等)を満たす事で利益配当を損金算入できるので、実質的に法人税の課税を免れる為二重課税を回避できる。(ペイスルー)
②合同会社、匿名組合(GKTK)スキーム
合同会社(GK)が対象不動産の「信託受益権」を買取るスキーム。
(所有権ではなく、信託受益権を購入する事で合同会社に掛かる各種税金を軽減できる)
さらにこの合同会社が匿名組合(TK)の営業者となって投資家(組合員)から出資を募集する仕組み。
合同会社は匿名組合に利益配当を行う=損金算入が出来る為、実質的に法人税の課税を免れる為二重課税を回避できる。(ペイスルー)
③REIT
J-REIT(上場、クローズドエンド型)と私募REIT(非上場、オープンエンド型)
の2つがある。
(投資法人等が、発行した証券を買い戻せるのがオープンエンド、買い戻せないのがクローズドエンド。)
クローズドエンドの場合個人投資家は好きなタイミングで売買できるので流動性リスクを回避できる。
J-REITは不動産運用事業を営む上場企業の株式と解釈できるので投信法が適用される。
★J-REITは2001年に上場銘柄が登場し、2003年にかけて上昇トレンドを形成、2008年のリーマンショックで銀行融資の引き締めにより市況は悪化したものの、
2010年の日銀緩和スタート(日銀のREIT買い入れ)以降断続的な緩和政策の甲斐あって堅調に推移しています。
(政府のREIT市場拡大の目的は空き家問題の解決では無く企業不動産「CRE」の活性化です。)
★REITは当初オフィスを中心とした銘柄がほとんどでしたが、近年では住宅はもちろん、物流拠点、商業施設、ヘルスケア施設など、様々なアセットタイプで登場しています。
④不動産向けローンの証券化
収益不動産取得ローン債権を証券化したもの(CMBS)
住宅ローン債権を証券化したもの(RMBS)
があります。
CMBSには単独の不動産に対するノンリコースローンを証券化するシングルアセットtypeと、
貸し手が実行したローンを一度 SPVに譲渡し、そのSPVがCMBSの発行体となるマルチアセットtypeの2種類があります。
RMBSで日本国内の代表的な例は住宅金融公庫の発行する住宅ローン債権で、「フラット35」の礎となっています。
開発型証券化
従来の証券化不動産は土地に建物が既存する不動産を取得して種々のスキームを当てはめて商品を作っていましたが、
最近では更地からスタートする開発型の商品も出ています。
開発型の場合は用地取得、設計、建設の都度、銀行借入やエクイティ出資を受けて計画を遂行していきます。
小口化商品
証券化スキーム(特にREIT)が「不動産賃貸業を営む企業の株式」と言い換えるのであれば小口化商品は「割り勘」で実物不動産を購入する事にあたり、
根拠法は不動産特定事業法となります。(不動産所有権でなく、「信託受益権」を対象とする場合は対象外です。)
★★★
J-REITをはじめ、不動産証券化市場は堅調に上昇傾向で推移しています。
昨今不動産投資向けローンをめぐる金融機関のトラブルや大手デベロッパーの建築したアパートの瑕疵など、
個人が一棟収益物件を取得し運用するリスクについて顕在化しています。
不動産証券化の際にも必須となっている「デューデリジェンス」(各方面から有識者を用して行う取得不動産の調査)
の重要性が認識されるとともに、不動産投資の在り方についても変革の時が近づいています。