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不動産まめ知識

鑑定理論

不動産鑑定評価基準 総論第8章-鑑定評価の手順-

 

 

鑑定評価手順

 

1.鑑定評価の基本的事項を確定

(対象確定条件、想定上の条件、調査範囲等条件)

 

2.依頼者、提出先等及び利害関係者の確認

(依頼者、提出先、開示の相手方)※個別具体的名称は必要なく、目的がわかれば良い。

関与不動産鑑定士の利害関係の確認(再委託先を含む

対象不動産:鑑定士の利害関係及び縁故、親族と対象不動産の間に利害関係が無いかどうか。

依頼者・提出先等:資本的関係、人的関係、取引関係

※利害関係の確認作業は鑑定士への「倫理観の期待」による。

(利害関係を確認した上で、鑑定評価の恣意的な調整は倫理観によって出来ないだろうという抑止力になる。)

※計算ミスの有無を確認したに過ぎない等、鑑定評価に直接携わっていない鑑定士は「関与不動産鑑定士」に含まない。

鑑定評価額の公表の有無

提出先の確認とともに公表の有無も依頼者へ確認が必要。

 

3.処理計画の策定

各種調査、資料収集や試算額の調整等のスケジュール計画の策定。

 

4.対象不動産の確認

物的確認、権利の態様の確認。実地調査、聴聞、公的資料の確認によって的確に行う。

※いかなる場合もこの作業を省略することはできない。(省略した場合は不当鑑定となる。)

・物的確認:登記には公信力が無いため、地積をはじめ自分で「実地調査」する。

建物内覧可能な場合は内覧して確認すべきだが、再評価の場合過去に自ら内覧しており、

個別的要因に変化がないと認められる場合は内覧の省略が可能な場合がある。実地調査は絶対に省略できない。

・権利の態様の確認:全ての権利関係を明瞭に確認する。

登記に記載されていない権利(賃借権、占有者がいないか等)も確認する必要がある。

 

5.資料の収集及び整理

・確認資料:物的確認、権利の態様の確認に必要な資料。

登記事項証明書、固定資産課税台帳写、地籍図、公図・・・(売買仲介で集める資料全般)

賃貸借契約書の確認事項:目的・当事者・期間・数量・支払賃料・一時金の有無・特約

★契約書フォームの統一やレントロール等によって全ての賃貸借契約書を確認する必要がない場合がある。

・要因資料:一般資料、地域資料、個別資料に分かれる。

 一般資料→経済成長率、消費者物価指数等

  地域資料→住宅地図、地方公共団体の条例等

   個別資料→土壌環境調査資料等

・事例資料:建設事例、取引事例、収益事例(価格三法の資料

 

6.資料の検討及び価格形成要因の分析

価格形成要因の分析によって一般的要因、地域要因、個別的要因といったマクロな観点から出発し、「最有効使用」と「価格」を求める。

価格形成に重大な影響を与える要因が調査上十分に反映できない場合原則として他の専門家の調査結果を活用する事が必要。

ただし、依頼者の「同意」を得た場合は「想定上の条件」を設定して、若しくは「調査範囲等条件」を設定して鑑定評価を行う事ができる。

あるいは、価格形成上の影響の程度を「合理的に推定」して鑑定評価を行う事ができる。

価格形成要因から除外して鑑定評価を行う事が可能な場合として社会通念・科学的知見に照らし、

因果関係が明確でない場合通常の調査で当該事項の存否の端緒すら把握できない場合があり、あくまで「不動産鑑定士の判断」に基づくものである。(同意は不要

 

7.鑑定評価の手法の適用

地域分析、個別分析により把握した対象不動産に係る市場の特性等を反映した複数の鑑定評価手法を適用すべきである。

適用が困難な手法についてはその考え方を出来るだけ参酌する事が求められるが、

適用が困難でない場合でも価格形成について十分な説得力がある場合は一部省略する事ができる。

 

8.試算価格、試算賃料の調整

各手法によって求められた試算価格、試算賃料の「再吟味」と「説得力に係る判断」を言う。

再吟味とは試算の精度を高める作業。

(資料の適否、諸原則の適否、三要因の適否、各手法の適否、価格形成要因に係る判断の整合性、単価の適否)

説得力に係る判断とは各試算に優劣を付ける作業。(適合性、相対的信頼性)

試算価格、試算賃料の調整は、一つの手法しか適用していない場合でも、各手法の試算結果が一致している場合でも省略することは出来ない。

 

9.鑑定評価額の決定

公示価格を「規準」として価格を決定する。(基準では無い

 

10.鑑定評価報告書の作成

◆論点◆

 

・対象不動産の確認

鑑定評価に当たっては、まず、鑑定評価の基本的事項(対象不動産、価格時点及び価格又は賃料の種類)を確定しなければならない。

対象不動産の確認にあたっては、その内容を明瞭にしなければならず、対象不動産の物的確認及び権利の態様の確認に分けられ、実地調査、弔問、公的資料の確認等により、的確に行う必要がある。

対象不動産の確定においては依頼者によって観念的に対象不動産の所在、範囲等が設定されているに過ぎないため、確定された対象不動産の内容と現況との間に齟齬が無いかを確認する必要がある。

つまり、対象不動産の確定は不動産鑑定士が鑑定評価の依頼目的及び条件に照応する対象不動産と当該不動産の現実の利用状況と照合して確認するという実践行為(対象不動産の確認)を経て最終的に確定されるべきものである。したがって対象不動産の確認は、適正な鑑定評価の前提となるものであるため、いかなる場合においてもこの作業を省略してはならない。

また、対象不動産の確認を行った結果、依頼者から示された内容と相違する場合は再度依頼者に確認の上、対象確定条件の改定を求める等、適切な措置を講じなければならない。

 

・対象不動産の確認に際する留意事項

鑑定評価に当たっては、まず、鑑定評価の基本的事項(対象不動産、価格時点及び価格又は賃料の種類)を確定しなければならない。

対象不動産の確認にあたっては、その内容を明瞭にしなければならず、対象不動産の物的確認及び権利の態様の確認に分けられ、実地調査、弔問、公的資料の確認等により、的確に行う必要がある。

対象不動産の物的確認に当たっては、土地についてはその所在、地番、数量等を、建物についてはこれらの他家屋番号、構造、用途等をそれぞれ実地にて確認することを通じて対象不動産の存否及び内容を、確認資料を用いて照合しなければならない。

権利の態様の確認に当たっては、物的に確認された対象不動産について、当該不動産に係るすべての権利関係を明瞭に確認することにより、権利の存否及び内容を、確認資料を用いて照合しなければならない。

確認に当たり留意すべき事項としては下記のものがあげられる。

・対象不動産の確認は、適正な鑑定評価の前提となるものであるため、いかなる場合においてもこの作業を省略してはならない。

・物的確認を行うに当たっては、対象不動産について登記事項証明書等により登記または登録されている内容とその実態の異同について把握する必要がある。

・物的確認を行うに当たっては、原則として内覧の実施を含めた実地調査を行うものとする。

・権利の態様の確認に当たっては、登記事項記載証明書等に記載されていない権利についても、聴聞を通じてその実態を明らかにする必要がある。

・賃貸借契約等に係る権利の態様の確認に当たっては、原則として契約の目的、当事者、期間、数量、月額支払賃料、一時金の有無とその内容、特約を確認しなければならない。

・区分所有建物及びその敷地の確認に当たっては、登記事項証明書、建物図面、管理規約、課税台帳、実測図に基づき物的確認と権利の態様の確認を行う。

・対象不動産の確認を行った結果、依頼者から示された内容と相違する場合は再度依頼者に確認の上、対象確定条件の改定を求める等、適切な措置を講じなければならない。

鑑定評価報告書には、対処不動産の物的確認及び権利の態様の確認について、確認資料と照合した結果を明確に記載しなければならない。また、実地調査を行った年月日と運事項を合わせて記載しなければならない。

 

・不明瞭な価格形成要因の取り扱いについて

不動産の価格を形成する要因(価格形成要因)とは、不動産の効用及び相対的希少性並びに不動産に対する有効需要の三者に影響を与える要因をいい、一般的要因地域要因及び個別的要因に分けられる。

価格形成要因について、専門職業科としての注意を尽くしてもなお対象不動産の価格形成に重大な影響を与える要因が十分に判明しない場合には、原則として他の専門家が行った調査結果等を活用することが必要である。ただし、依頼目的や依頼者の事情による制約がある場合には、依頼者の同意を得て、想定上の条件を設定して鑑定評価を行うこと若しくは調査範囲等条件を設定して鑑定評価を行うこと、又は自己の調査分析能力の範囲内で当該要因に係る価格形成上の影響の程度を推定して鑑定評価を行うことができる。

なお、依頼目的や依頼者の事情に用制約がある場合において想定上の条件又は調査範囲等条件を設定できない場合や客観的な推定ができない場合は館定評kの依頼を謝絶するべきである。

上記のような鑑定評価を行った場合は以下の点に留意して鑑定評価報告書を作成しなければならない。

依頼目的に応じて設定された地域要因若しくは個別的要因についての想定上の条件又は調査範囲等条件に付いてそれらの条件の内容及び評価における取り扱いが妥当なものであると判断した根拠を明らかにするとともに、必要があると認められるときは当該条件が設定されない場合の価格等の参考事項を記載すべきである。

鑑定評価の手順の各段階において、鑑定評価における資料収集の限界、資料の不備等によって明らかにすることができない事項が存する場合の評価上の取り扱いを記載しなければならない。その際は不動産鑑定士が自ら行った調査範囲及び内容と他の専門家が行った調査範囲及び内容を明確にしなければならない。

なお、他の専門家が行った調査結果を活用するために入手した調査報告書等の資料についても、必要に応じて附属資料として添付しなければならないが、当該専門家の同意が得られない場合はこの限りでない。

調査範囲等条件を設定して鑑定評価を行う場合若しくは価格形成に影響があるであろうと言われている事項について原因や因果関係が明確でない場合、又は不動産鑑定士の通常の調査において当該事項の存否の端緒すら把握できない場合は当該条件、事項を価格形成要因から除外して鑑定評価を行うことが出来る。

 

・鑑定評価手法の適用

鑑定評価の手法の適用に当たっては、鑑定評価の手法を当該案件に即して適切に適用すべきである。この場合、より精度の高い鑑定評価額を得るために、基準各論に定められている複数の鑑定評価手法を併用することが原則となる。

しかし、対象不動産の種類や所在地の実情、資料の信頼性等により複数の鑑定評価手法の適用が困難な場合がある。そのような場合でも、その考え方をできるだけ参酌するように努めるべきである。

特に、対象不動産の種別及び類型並びに賃料の種類に応じた各論に規定する鑑定評価手法の適用ができない場合には、対象不動産の市場の特性に係る分析結果に照らし、その合理的な理由を記載する。

また、適用が必ずしも困難でない場合でもその鑑定評価の手法に複数の鑑定評価方式の考え方が適切に反映され、対象不動産の価格形成について客観的にみて十分な説得力があると認められる場合には基準各論に定められている手法を一部省略することができ、当該鑑定評価でそれらの鑑定評価方式に即した複数の鑑定評価の手法を適用したものとみなすことができる。

なお、証券化対象不動産の鑑定評価を行う場合には、より精緻な鑑定評価が求められるため、適用可能な手法の省略はできない。

 

・試算価格の調整の必要性

不動産の鑑定評価の方式は、価格を求める手法と賃料を求める手法に分類される。価格を求める鑑定評価手法の適用により求められた価格は鑑定評価額に至る中間の段階にある試算的な価格であり、試算価格という。

試算価格の調整とは、鑑定評価の複数の手法により求められた各資産価格の再吟味及び各試算価格が有する説得力に係る判断を行い、鑑定評価における最終判断である鑑定評価額の決定に導く作業をいう。

鑑定評価の三方式の考え方を反映した鑑定評価額の各手法は、同一の価格を指向するものであって、求められた価格は理論的には一致すべきものである。しかし、現実には鑑定評価の書く手順において事例の収集等実施される作業は実行可能な範囲に限られることや試算価格が求められるまでの過程において主体の判断や意見が多く介在することから、各試算価格の相互間には一般的に開差が生じるため、試算価格の調整が必要となる。

鑑定評価報告書には鑑定評価額の決定の理由の要旨として、試算価格の再吟味及び説得力に係る判断の結果を記載しなければならない。

 

・試算価格の調整に際する留意事項

試算価格の調整においては、特に次の事項に留意すべきである。

Ⅰ 各試算価格又は試算賃料の再吟味

1.資料の選択、検討及び活用の適否
2.不動産の価格に関する諸原則の当該案件に即応した活用の適否
3.一般的要因の分析並びに地域分析及び個別分析の適否
4.各手法の適用において行った各種補正、修正等に係る判断の適否
5.各手法に共通する価格形成要因に係る判断の整合性
6.単価と総額との関連の適否

Ⅱ 各試算価格又は試算賃料が有する説得力に係る判断

1.対象不動産に係る地域分析及び個別分析の結果と各手法との適合性
2.各手法の適用において採用した資料の特性及び限界からくる相対的信頼性

各手法に共通する価格形成要因に係る判断の整合性とは、鑑定評価の各手法の中には三手法の考え方が複合的に反映されているため、一つの手法で採用されている方式の考え方が他の手法で採用した方式の要因の捉え方と矛盾し絵はならないことを基準は要請している。例えば、建物の個別的要因における設備の老朽化について、原価法、取引事例比較法、収益還元法のそれぞれの手法を適用する際に同一の視点で整合性をたもって反映しているかを再吟味する必要がある。

単価と総額との関連の適否とは、試算価格の再吟味の段階においての比較尺度としての単価、求めるべき総額の妥当性について、鑑定評価の手法の適用の過程までさかのぼって再検討し、単価と総額の関連の適否に留意することが必要となる。例えば大規模各地については需要者が限定されるため単価が低くなる傾向にあるが、マンション開発用地の需要が増加している状況下では希少性が高まり単価も高くなる場合がある。

対象不動産に係る地域分析及び個別分析の結果は市場分析の結果と読みかえることができるため、試算価格の説得力の判断は、試算価格が現実の市場の需給動向を正確に反映しているか、市場参加者の行動原理をどの程度反映しているかが決め手となる。

資料収集には時間、費用、収集先の事情等の制約がある為限界があり、絶対的な信頼性を期待できるものではなく、相対的な信頼性しか期待できないことをわきまえるべきである。

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