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不動産まめ知識

民法

民法 〜債権各論〜

 

 

契約

 

契約の種類

 

双務契約:双方が債務を負う契約。(一方のみの場合は片務契約という。)

有償契約:当事者が互いに財産の支出をする契約。(一方のみの場合は無償契約)

 

同時履行の抗弁権

 

双務契約の当事者の一方は、相手方が債務の履行をするまでは自己の債務の履行を拒む事ができる。

(同時履行の抗弁権を有する場合は履行遅滞とはならない。)

 

危険負担

 

双務契約の当事者の一方が、履行不能を理由に債務の履行を拒絶できるか否かという問題。(原始的不能を含む)

 

解除

 

取消と同じく遡及的に無効だが、「意思表示は完全に有効」となる。(詐欺や錯誤とは違い、意思表示に瑕疵が無い為。)

 催告による解除

相手方が債務履行しない場合、履行の催告をし、相当の期間内に履行がない場合は契約の解除をする事ができる。

 無催告解除

次の場合は催告なしで直ちに契約の解除ができる。

債務の全部の履行不能、債務者が全部の履行を拒絶、一部の履行不能・拒絶が発生し、残存部分のみでは契約目的を達成できない場合等。

 

解除の効果

 

各当事者は相手方に対して原状回復義務を負う。(遡及的に無効である為)

また、原状回復対象が金銭であれば利息も、金銭以外であれば受領後に生じた果実も返還する必要がある。

 

 

売買契約

 

売主義務:財産権移転義務、担保責任(契約不適合責任)

買主義務:代金支払義務

売買契約は有償・双務契約である。

手付解除:履行の着手前であれば売主は倍返し、買主は手付金放棄で契約解除が可能。

 

契約不適合責任

 

有償・双務契約の場合は不完全履行に対して契約不適合責任が生じる。

(例えば使用貸借契約は不完全履行に対して契約不適合責任は生じない。)

債権者には以下の権利が認められる。

追完請求権、代金減額請求権、損害賠償請求権、解除権

 

他人物売買

 

一部他人物:契約不適合責任が問われる。

全部他人物:契約不適合責任は問われない。(そもそも債務不履行責任だとして処理する。)

→代金減額請求ができない。

★種類または品質について、不適合な目的物を引き渡された事を「知った時から1年」以内に買主は売主へ通知する必要があります。

★数量または権利の要素について契約不適合である必要があります。

 

賃貸借契約

 

賃貸借契約もまた有償・双務契約である為売買契約の規定を準用する。

※賃貸借の場合、履行不能に陥った場合は当然に契約終了となる。(Ex:建物滅失)

費用償還義務:賃貸人は賃借人が必要費・有益費を支出した場合は償還する義務が生じる。

 賃借権の対抗力

民法:不動産の賃貸借は「登記」する事で買主やその他の第三者に対抗できる。

借地借家法:借家権は「引渡」を受ける事で買主やその他の第三者に対抗できる。

★賃貸人に無断で賃借権を譲渡したり、転貸した場合でも、賃貸人に対する背信的行為と認めるに足りない特段の事情がある場合は解除権が発生しない。(信頼関係破壊理論

 

請負契約

 

請負人が仕事の完成を注文者に約し、仕事の結果に対してその報酬を払う契約。

 

 

◆論点◆

 

・売買契約後、引渡し前に隣家の火事によって建物が焼失した場合、売主は売買代金を請求できるか(危険負担)

売主は買主に売買代金を請求できるか。

この点、当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなった場合、債権者は反対給付の履行を拒むことができる。

したがって、隣家の火事という当事者双方の責めに帰すことができない事由により債務履行不能となっている以上買主は売買代金の請求を拒むことができ、売主は売買代金を請求できない。

 

・債務不履行による売買契約の適法な解除をもって、解除前の未登記の転得者に対して目的物の返還を求めることはできるか

売主は転得者に返還を求めることはできるか。売買契約が債務不履行を理由に適法に解除された場合、買主は当初から無権利者であったことになり、登記に公信力が無い以上買主からの譲受人(転得者)も所有権を取得し得ないのが原則である。そこで、本件の譲受人が545条1項ただし書の第三者にあたるかが問題となる。

この点、第三者とは解除前の第三者をいうと解する。なぜなら、解除とは契約を遡及的に消滅させ、当事者を契約締結前の状態に回復させる制度であり、解除までに取引をした者が解除の遡及効により不利益を受けない旨を定めたものと解されるからである。

したがって解除前に買主から譲り受けた転得者は545条1項ただし書の第三者に該当する。

次にこの転得者が第三者として保護されるためには登記が必要かが問題となる。

この点、解除前の第三者として保護されるためには登記が必要と解する。なぜなら帰責性の無い解除権者の犠牲の下で第三者を保護する以上、第三者として保護されるにはなすべきことをすべきだからである。

したがって未登記の転得者は第三者として保護されず、売主は返還を求めることができる。

 

・土地に法律上の瑕疵があった(ex:予定建築物が法律上の制限により建築できない)場合、売主の担保責任を追及できるか

買主は売主に対して担保責任を追及できるか、すなわち、目的物の品質には物理的瑕疵のみならず、法律的瑕疵も含まれるかが問題となる。

この点、目的物の品質には法律的瑕疵も含まれると解する。なぜなら、買主保護という売主の担保責任制度の目的からすれば、物理的瑕疵と法律的瑕疵を区別する必要はないからである。

したがって、買主は売主の担保責任を追及できる。

 

・借地権付建物の売買が行われたものの借地権を売主が有していなかった場合、売主の担保責任を追及できるか

買主は売主に対して担保責任を追及できるか。

この点、売主が買主に移転した権利が契約の内容に適合しない場合には契約の不完全履行として、買主は売主に対して売主の担保責任を追及できると解する。

したがって買主は売主の担保責任を追及できる。

 

・借地権付建物の売買が行われたが、土地に欠陥があり建物の取り壊しを余儀なくされた場合、売主の担保責任を追及できるか

買主は売主に対して担保責任を追及できるか。すなわち借地権付建物の売買において敷地の欠陥が、目的物の品質の契約の不適合といえるかが問題となる。

この点、借地権付建物の売買における敷地の欠陥は目的物の品質の契約不適合とはいえないと解する。

なぜなら、売買の目的物は建物と土地賃借権(借地権)であり、敷地そのものではない以上、敷地に欠陥があっても売買の目的物に欠陥があったとはいえないからである。また、このように考えても、借地権者は借地権設定者に対し、敷地の欠陥を修復するように請求できる。

したがって買主は売主に担保責任を追及できない。

 

・建物に欠陥があった場合、欠陥の修補を請求できるか

買主は売主に対して欠陥の修補を請求することができるか。

この点、引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は売主に対し目的物の修甫、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。

したがって、建物の品質に契約不適合が存するので、買主は売主に対し建物の欠陥の修補を請求することができる。

 

・建物に欠陥があった場合、売主は担保責任と錯誤取消のいずれを主張しうるか

買主は売主に対して品質に契約不適合が存するため、欠陥の担保責任を追及できるはずである。

また、買主は建物に欠陥が無いと信じて購入してのであるから購入の動機に誤信があり、その動機が表示されて意思表示の内容となっていた場合、重過失がなければ錯誤取消しを主張できるはずである。

買主は売主に対し担保責任と錯誤取消しのいずれを主張できるのかが問題となる。

この点、買主は売主の担保責任と錯誤取消しのいずれかを選んで主張できると解する。

なぜなら、契約不適合に対する法的救済手段が複数ある以上、そのいずれも認めるのが妥当だからである。

したがって、買主は売主に対して担保責任と錯誤取消しのいずれかを選んで主張できる。

 

・借地上の建物名義人が借地権者以外の者であった場合、借地の譲受人に借地権を対抗できるか

借地上の建物所有権の登記は借地権の対抗要件となるが、建物所有権の登記が借地権者以外の者の名義でなされている場合も対抗要件として認められるかが問題となる。

この点、他人名義の建物登記は借地権の対抗要件として認められないと解する。

なぜなら自己の建物市所有権さえ第三者に対抗できないような無効な登記に、借地権の対抗力を認める必要はないからである。

したがって建物所有者は借地の譲受人に借地権を対抗できない。

 

・二重賃貸

二重賃貸の場合いずれが賃借人となるか。その優劣の判断基準が問題となる。

この点、不動産の賃貸借はこれを登記したときはその不動産について物権を取得した者がその他の第三者に対抗できると解する。

したがって先に登記を具備した者が賃借人となる。

 

・未登記の新たな建物所有者と一時使用でない賃借人の対抗関係について

本件は借地借家法の適用があり、引渡しを受けている賃借人は以後その建物について物権を取得した者に対してもその賃借権を対抗できるので、新所有者に対しても自己の賃借権を対抗できる。この場合新所有者と賃借人の法律関係はどうなるか。

まず建物の譲渡により賃貸人たる地位も移転するかが問題となる。

この点、賃貸借の対抗要件を備えた場合においてその不動産が譲渡されたときはその不動産の賃貸人たる地位はその譲受人に移転する。

したがって引渡しを受け対抗要件を備えていることから賃貸人たる地位は当然に新所有者に移転する。

次に、新所有者が賃借人に賃貸人たる地位を主張して賃料を請求するためには登記を備えていることが必要かが問題となる。

この点、賃貸人たる地位の移転については賃貸不動産の所有件移転登記をしなければ賃借人に対抗することができない。

したがって、新所有者が賃料を請求するためには登記が必要である。

よって新所有者に賃貸人たる地位は当然に移転するものの、登記を備えていないため賃借人へ賃料を請求することはできない。

 

・賃貸人の地位を留保する特約付きで賃貸不動産が譲渡された場合、賃借人は賃料請求を拒むことはできるか。

賃貸人たる地位を旧所有者に留保する特約つきで賃貸不動産が譲渡された場合、賃借人は旧所有者からの賃料請求を拒むことはできるか。特約があっても賃貸人たる地位は移転するかが問題となる。

この点、不動産の譲渡人及び譲受人が賃貸人たる地位を譲渡人に留保する旨及びその不動産譲受人が譲渡人に賃貸する旨の合意をしたときは、賃貸人たる地位は譲受人に移転しない。

したがって、賃借人は旧所有者からの賃料請求を拒むことができない。

 

・借地上の建物を賃貸するにあたり借地権設定者の承諾は必要か

借地上の建物を賃貸するにあたり借地権設定者の承諾は必要か。すなわち借地上の建物の賃貸が賃貸人の承諾が必要な土地の転貸にあたるかが問題となる。

この点、借地上の建物の賃貸は土地の転貸には当たらず、土地の賃貸人の承諾は不要と解する。

なぜなら、建物の賃借人は建物の利用権を取得したにすぎず、土地の利用権を取得したとはいえないからである。

したがって、借地権設定者の承諾は不要である。

 

・借地上の建物を譲渡するにあたり借地権設定者の承諾は必要か

借地権者が自己所有の建物を譲渡するにあたり借地権設定者の承諾は必要か。すなわち賃借した土地上の建物譲渡は土地賃借権の譲渡を伴い、賃貸人の承諾が必要かが問題となる。

この点、賃借した土地上の建物譲渡は87条2項の類推適用により土地賃借権の譲渡も伴い、土地の賃貸人の承諾が必要と解する。

なぜなら、土地賃借権は権利であり、物ではないため87条2項の従物にはあたらないが、建物とその敷地利用権は経済的、社会的にみれば一体といえ、主物と従物の経済的結合関係に鑑み、従物を主物の処分に従うという87条2項の趣旨にあてはまるからである。

したがって、借地権設定者の承諾は必要である。

 

・無断で転貸された場合、契約を解除できるか

民法は賃貸人の承諾のない賃借権の転貸がなされた場合は、賃貸人は当該契約を解除できると定めるが常に解除できるかが問題となる。

この点、賃貸人の承諾のない賃借権の譲渡・転貸がなされても、賃貸人に対する背信的行為と認めるに足りない特段の事情があれば、解除権は発生せず、賃貸人は解除できないと解する。

なぜなら、民法612条2項の趣旨は賃貸借契約が当事者間の信頼関係を基礎とする継続的契約であることに鑑み、無断譲渡や転貸は賃貸借関係を継続するに耐えない背信的行為だと考えて、賃貸人に解除権を認めようという点にある。

このような趣旨からすると、無断譲渡や転貸により第三者に賃借物を使用収益させた場合でも賃借人の当該行為が賃貸人に対する背信的行為と認めるに足りない特段の事情がある場合においては、解除を認める必要がないからである。

したがって、原則として契約の解除はできるが、賃貸人に対する背信的行為と認めるに足りない特段の事情が存在することを賃借人(転貸人)が立証できれば、賃貸人は契約を解除できない。

 

・借地上の建物に譲渡担保権を設定する場合、借地権設定者の承諾は必要か

借地上の建物を目的とする譲渡担保権の設定が、土地の賃貸人の承諾が必要な賃借権の譲渡にあたるかが問題となる。

この点、譲渡担保権者が建物の引渡しを受け、建物を使用収益している場合は、賃借権の譲渡にあたると解する。

なぜなら、民法は当事者間の信頼関係を重視して、賃借権の譲渡に、賃貸人の承諾を要求したものであるところ、譲渡担保権者が建物の引渡しを受け、これを使用収益する場合は土地の利用者も変更を生じ、当事者間の信頼関係も破壊されると考えられるからである。

したがって、譲渡担保権の設定に留まり、建物を引き続き借地権者が使用している場合、借地権設定者の承諾は不要である。

 

・原契約を債務不履行解除する際、転借人への催告は必要か

賃貸人は転借人に対して賃借人の滞納賃料を請求する事ができるため、転借人が賃借人の滞納賃料を支払えば賃借人の債務不履行は回避される。そこで、賃貸人は転借人に催告せず賃貸借契約の解除を対抗できるかが問題となる。

この点、賃貸人は転借人に催告を行わなくても、原賃貸借契約の解除を転借人に対抗できると解する。

なぜなら、賃貸人は転借人に対して権利を有するが、義務を負うものではなく、催告を必要とすると賃貸人の解除権を不当に制限するからである。

したがって、賃貸人が転借人に原賃貸借契約の解除を対抗するにあたり催告は必要ない。

 

・借地上の建物の賃借人は、土地賃貸借契約が合意解除された場合、土地所有者からの明渡しを拒絶できるか。

土地所有者が建物所有者との土地賃貸借契約を合意解除し、建物賃借人に土地の明渡しを求めた場合、建物賃借人はこれを拒絶できるかが問題となる。

この点、土地の明渡しを拒絶できると解する。

なぜなら、権利の放棄も正当に成立した他人の権利を害する場合には認められないし、信義則にも反するからである。

したがって建物賃借人は土地所有者の明渡しの求めを拒絶できる。

 

・賃借人は建物の新所有者に対して敷金の返還を請求できるか

賃借人は賃貸借契約終了時に新所有者に対して敷金の返還を求めうるか。すなわち、対抗力ある賃借権が設定された賃貸不動産の譲渡により賃貸人たる地位が移転した場合には敷金返還義務も新賃貸人に移転するか、問題となる。

この点、敷金返還債務は当然に新賃貸人に承継される。

もっとも、旧賃貸人の下で発生した敷金で担保される未払賃料債権などについては敷金を持って当然に充当されると解する。

したがって賃借人は新所有者に対して、旧所有者の下で発生した損害金等について控除された残額につき、敷金の返還を求めうる。

 

・賃貸人の承諾を得て賃借権を譲渡した場合、旧賃借人は敷金の返還を求めうるか

旧賃借人は賃貸人に対して敷金の返還を求めうるか。すなわち、賃借権の譲渡に伴って、敷金返還請求権は新賃借人に移転するかが問題となる。

この点、賃借権が譲渡され、賃借人が交代した場合には原則として敷金返還請求権は承継されず、賃貸人は未払賃料等を控除した残額を旧賃借人に返還しなければならない。

したがって、旧賃借人は賃貸人に対して敷金の返還を求めうる。

 

・敷金返還と建物明渡の同時履行は請求できるか

賃貸借契約終了後、賃貸人が賃借人に対して建物の明渡しを求めた場合、賃借人は敷金返還との同時履行を主張する事ができるか。敷金返還請求権の発生時期と関連して問題となる。

この点、敷金返還請求権は賃貸借が終了し、かつ、賃貸人が目的物の返還を受けたときに発生する。

したがって、敷金返還と建物明渡は同時履行の関係に立たず、同時履行を請求することはできない。

 

・賃料の滞納を理由に、賃貸借契約を解除する事ができるか

賃貸借契約につき、債務不履行があった場合に一回的給付を目的とする売買契約と同様に解除が認められるか。賃貸借契約は継続的契約であり、軽微な債務不履行であっても相当の期間を定めて催告すれば解除できるとするのでは賃借人にとって酷であるため、問題となる。

この点、賃借人に債務不履行が認められる場合、原則として賃貸人はその賃貸借契約を解除する事ができると解する。

なぜなら、賃貸借契約においても債務不履行による解除を否定すべきではないからである。

もっとも、賃貸借契約は当事者間の信頼関係を基礎とする継続的契約である。そこで、債務不履行が生じても、その損害が軽微であって、信頼関係を破壊するに至らないと認められる場合には、信義則上、解除権は発生しないものと解する。

したがって、賃料の滞納を理由に賃貸借契約を解除するにあたり、信頼関係を破壊するに至らないと認められる場合には解除する事ができない。

 

・信頼関係を著しく破壊するに至る事情がある場合、催告なしに直ちに解除できるか

賃貸借契約につき、債務不履行があった場合に一回的給付を目的とする売買契約と同様に解除が認められるか。賃貸借契約は継続的契約であり、軽微な債務不履行であっても相当の期間を定めて催告すれば解除できるとするのでは賃借人にとって酷であるため、問題となる。

この点、賃借人に債務不履行が認められる場合、原則として賃貸人はその賃貸借契約を解除する事ができると解する。

なぜなら、賃貸借契約においても債務不履行による解除を否定すべきではないからである。

もっとも、賃貸借契約は当事者間の信頼関係を基礎とする継続的契約である。そこで、債務不履行が生じても、その損害が軽微であって、信頼関係を破壊するに至らないと認められる場合には、信義則上、解除権は発生しないものと解する。

次に、賃貸借契約の解除が認められる場合、催告が必要であるが、常に催告しなければ解除できないかが問題となる。

この点、当事者間において信頼関係の破壊の程度が著しい場合は、賃貸人は催告なしに解除しうると解する。

なぜなら、解除に催告を必要とするのは催告によって債務者が翻意して履行した場合には契約を維持するのが妥当ということにあるが、信頼関係の破壊の程度が著しい場合、もはや当事者間において信頼関係を修復し、契約を維持するのは困難だからである。

したがって、信頼関係を著しく破壊するに至る事情がある場合、催告なしに直ちに解除できる。

 

・賃借人が失火により建物を全焼させた場合、賃料を継続して支払うべきか

賃借人の責めに帰すべき事由により、目的物が滅失しているのであるから、危険負担に関する債権者主義をそのまま適用し、賃借人はなおも賃料を支払うべきではないかが問題となる。

この点、賃借物の全部が滅失、その他の事由により使用収益が出来なくなった場合、賃貸借はこれによって当然に終了する。

したがって、賃借人は賃料を支払う必要はない。

なお、賃借人は目的物の返還債務について、自己の責めに帰すべき理由により履行不能としていることから賃貸人に対して債務不履行に基づく損害賠償債務を負うこととなる。

 

・賃借人が唯一の相続人と、同居していた内縁の妻を残して死亡した場合、内縁の妻は賃貸人の明渡請求を拒否できるか

内縁の妻は賃貸人からの明渡請求を拒否できるか。すなわち、内縁関係にあったものは他に相続人がいない場合においてのみ借家権を承継しないため、立ち退かなければならないかが問題となる。

この点、内縁関係にあった者は相続人が有する借家権を援用することにより居住を継続できるものと解する。

なぜなら、内縁関係にあった者は従前、被相続人の借家権を援用して居住していたのであり、このことは被相続人の死亡という偶然の事情によって変更すべきではないからである。

したがって、内縁の妻は相続人が有する借家権を援用することにより居住を継続できる。

 

・請負契約の締結後、建物が完成したにも関わらず代金を支払わない注文者に対し、いかなる主張が可能か

完成建物の所有権が注文者または請負人のいずれに帰属するかを検討する。

この点、所有権の帰属についての特約がある場合は特約によるが、特約がない場合は材料の供給をどちらが行ったかにより、場合を分けて考えるべきである。

なぜなら、請負人が材料を供給した場合、請負人の報酬債権を確保するため、建物所有権はいったん請負人に帰属し、その後引渡しによって注文者に移転すると考えるのが公平だからである。

したがって両者間で特約がない限り、完成建物の所有権は材料を供給した者に帰属する。

よって、請負人が材料を供給した場合は請負代金債権の確保のため、建物の所有権を主張できる。

他方、注文者が材料を供給した場合、建物所有権は注文者にあるが、請負代金債権確保のために留置権、先取特権を主張できる。

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