契約
契約とは「当事者(通常は二人)」が「合意」することである。(法律要件)
(申し込みの意思表示に対し、相手方が承諾する事で成立する。)
つまり、契約書の作成や目的物の引渡、登記の移転は不要。
契約が成立すると当事者双方に債権・債務が発生する。(法律効果)
・法律要件が成立すると自動的に法律効果が発生する。
・法律効果が発生する行為を法律行為と呼ぶ。
★法律行為には一方的な意思表示で成立する「単独行為」と、双方の意思表示の合致によって成立する「契約」がある。
★民法の条文は全て「法律要件」と「法律効果」から成り立っており、法律効果だけを主張しても法律効果は認められない。
意思表示
契約が成立しても、その契約が「無効」になる場合と「取消」になる場合がある。
1.心裡留保
表見者(意思表示をする者)の意思表示が真意でない事を知りながら意思表示をする事。
Ex:冗談で「土地を売る」と言われ、冗談と知りながら(悪意)「土地を買う」と意思表示をする。
→買主が悪意・有過失の場合は無効となる。(善意、無過失の場合は冗談でも有効となる。)
善意の第三者:対抗することができない。(心裡留保による無効を主張できない。)
★心裡留保を知りながら土地を買い、即転売した転売先(第三者)に前所有者が「冗談だった」と言っても通用しないという事です。
※意思表示の構成要素
意思表示は「動機(お金がない)」「内心的効果意思(お金ないから土地を売りたい)」
「表示行為(土地を売る意思を外部に発信する)」の3フェースに分かれているが、「動機」は意思表示の構成要素ではない。
※心裡留保は内心的効果意思と表示行為の「意識的不一致」によるものである。
2.通謀虚偽表示
売主が買主と通謀し、(グルになって、)法律要件を仮装し、法律効果を発生させる行為。
Ex:売る意思が無いにも関わらず、固定資産税を回避するために買主と通謀し、売買契約を仮装して登記を移転する。
→「意思が無い」ので、無効となる。(私的自治の原則)
善意の第三者:対抗することができない。(通謀虚偽表示による無効を主張できない。)
★売る意思が本当は無かった、仮装の売買契約だったという前所有者と売主の間の事情は買主である「善意の」第三者には関係ない、債務を履行しろという事です。
第三者が悪意であっても、その「転得者」には対抗することができない。また、第三者が善意で、転得者が悪意であっても転得者に対抗する事はできない。
さらに、第三者が「2名」いる場合(二重譲渡)で、旧所有者(真の権利者)・売主からそれぞれ所有権移転を受けたケースでは「先に登記を備えた者」に所有権が認められる。
・意思外形対応型(真の権利者が100%、能動的に虚偽の外観を作り出している)
Ex:売主が「勝手に」買主へ所有権移転登記をし、買主が第三者へ譲渡するケース。
→「善意」の第三者に対抗できない。
・意思外形逸脱型(真の権利者も少なからず擁護する必要がある)
Ex:売主から買主への虚偽の仮登記を買主が「勝手に」本登記に改め、第三者へ譲渡するケース。
Ex2:売主が詐欺に遭い、買主へ所有権移転をさせられた後に買主が第三者へ譲渡するケース。
→「善意無過失」の第三者に対抗できない。
★売主への配慮も求められるので、過失の有無も問われる、結果、意思外形対応型よりも主観的要件が厳しくなるという事です。
3.錯誤
※民法改正により錯誤については「無効」から「取消」に変更となりました※
趣旨:内心的効果意思と表示行為の不一致を表意者自身が知らない事で錯誤は生じる。
(表意者がその不一致を知っていれば「心裡留保」となる。)
Ex:土地Aを売りたいのに土地Bを売るという意思表示をしてしまったまま話が進んでいる。
1号:表示行為の錯誤(内心的効果意思と意思表示の錯誤)
Ex:土地Aを買いたいのに土地Bを土地Aと誤認して購入の意思表示をした。
要件
・意思表示に対応する意思を欠く錯誤である事
・その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものである事
・表意者に重過失がない事
※相手方が悪意・重過失である場合は錯誤取消主張可能。また、表意者と相手方が同一の錯誤に陥っていた場合は錯誤取消主張可能。
2号:動機の錯誤(内心的効果意思の形成要因の錯誤)
Ex:地価上昇に関するデマ情報を元に土地購入の意思表示をした。
要件
・表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤(動機の錯誤)
・その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたこと。(明示黙示問わず)
→動機が表示されて意思表示の内容となっていることを言う。
→相手方が動機の表示に対し了解し、合意形成されたという事実が必要。
効果
原則:取消できる
例外:善意の第三者(取消前に取引関係に入った者)に対抗できない。
※取消とは「初めから無効」と言うこと。(遡及効)
錯誤取消前の第三者:95条4項により保護。
錯誤取消後の第三者:177条により表意者と対抗関係に立つ。
4.公序良俗違反
公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は無効とする。
(例えば、賭博契約については法は助力しないと言うこと。)
5.詐欺
詐欺又は強迫による意思表示は取り消すことができる。
96条1項:意思表示の相手方から騙された場合。
→当然に取り消すことができる。
96条2項:第三者から騙された場合。
→相手方が悪意又は善意有過失であれば取り消すことができる。
要件
詐欺とは人を欺罔して、錯誤に陥らせる事を言う。(錯誤に陥らなければ詐欺にはならない)
効果
原則:取消できる
例外:「善意・無過失」の第三者(取消前に取引関係に入った者)に対抗できない。
★心裡留保・虚偽表示に対して錯誤・詐欺の主観的要件が厳しいのは、錯誤・詐欺の方がより複雑で、当事者間の責任割合の決定も難しいからという理由です。
1.仮装譲渡した土地上に建てられた建物の賃借人(第三者)に対して原所有者は明渡を求めることができるか。
本件の場合、賃借人は所有者から建物を賃借しているに過ぎず、土地の使用権限は無い為明渡請求を受けるのが原則であるが、
それではこの第三者が不測の損害を受けることとなり、妥当で無い為この賃借人が「94条2項」の第三者に当たるかが問題となる。
94条2項の第三者とは、虚偽表示の当事者及びその一般承継人以外の者であって虚偽表示に基づいて新たに独立した法律上の利害関係を有するに至った者と解する。
本件の場合、虚偽の外観による事実上の利害関係を有するに過ぎず、法律上の利害関係は有しない為、第三者は94条2項の第三者に該当しない為、原所有者の請求は認められる。
2.