ストラクチャードファイナンスとは
企業の信用力に対して融資を実行する「コーポレートファイナンス」とは違い、
展開する事業や不動産であればその収益性や資産価値に注目し、融資を実行する手段です。
不動産証券化の意義として「倒産隔離」があります。
企業と企業が保有する資産を切り離す→切り離した資産(を保有するSPV)に対して融資を受け資金調達を試みます。
ストラクチャードファイナンスはSPVに企業としての信用力は無い中で融資を受けようとするものであるため、
証券化において必須の手段です。この資産分離の側面から見て「アセットバックドファイナンス」とも呼びます。
※あくまで「資産を現所有者からSPVに分離」した上で対象不動産の収益力などを加味して実行される融資ですので、
担保付融資(Ex:抵当権を設定しての不動産投資ローン)とは別物となります。
倒産隔離
①資産の原所有者(オリジネーター)の倒産リスクと分離させる(オフバランス)
②SPV自体の倒産リスクの排除(他業禁止にする、SPCの取締役等が倒産申立を行わない旨の誓約をさせる等)
③信用補完と流動性補完により倒産リスクを減少させる
信用補完・流動性補完のためにはSPVに優先劣後構造を採用すること、現金準備勘定にてキャッシュをプールしておく等の方法があります。
★倒産隔離についてはこちらの記事も併せてご参照ください。
ストラクチャードファイナンスのステークホルダー
・オリジネーター
SPVへ売却する資産の持ち主です。
・サービサー
SPVへオリジネーターから移転した債権の回収を管理する者。オリジネーターが兼任する事が多いです。
また、不良債権化したものはスペシャルサービサーとして債権回収業者が動きます。
(大家さんが回収できなかった家賃を、督促業者が回収するイメージです。)
サービサーが破綻し、営業資金等と入り混じったキャッシュフローの差し押さえが発生した結果、
配当や返済が滞るリスクをコミングリングリスクといいます。
・アレンジャー
資金調達のマネジメント全般を行う者です。(アレンジ自体は金商法等のライセンスを必要とする業務に含まれない場合もあります。)
・SPV
不動産証券化においては法人、信託、組合等のオリジネーターから資産を譲り受けるための「箱」という考え方です。
ABS(Asset Backed Securities)
ABSとはアセットバックドファイナンスとは異なり、
住宅ローンや商業用不動産担保ローンをはじめ貸付金銭債権の裏付けとして発行される証券です。
(債権に投資家が出資をし、買い取るイメージです。)
アセットバックドファイナンスの場合、サービサーが債権回収を行いSPVへとお金が流れますが、
ABSの場合、償還方法が複数あります。
ABS償還方法一覧
・ハードブレット
満期一括での償還。
・ソフトブレット
ハードブレットと異なり、償還を延期したり、早期の返済をスタートする等、
臨機応変な対応を可能とします。
・コントロールアモチゼーション
償還金額を一定とし、支払う形態です。
償還金額を超える債権プールの余剰金はSPVに残るため、投資家の運用効率が下がります。
(つまり、オリジネーターの資金調達コストが上昇します。)
・パススルー
債権プールからのキャッシュフローをそのまま投資家に元利金として払う形態です。
投資家は元本償還のスケジュールが変動する、機会損失を被る点もありますが、オリジネーターの資金調達コストは下がります。
CMBSとは商業用不動産向けノンリコースローンを担保とした証券化商品です。
商業用不動産向けローンは、アモチゼーション(分割返済)ではなく、
担保不動産の売却やリファイナンスによってバルーンペイメント(一括返済)されます。
金銭債権を裏付け資産とした証券化商品(債務担保証券)をCDO(Debt)といい、
銀行融資を対象とした商品をCLO(Loan)といいます。
また、債券類似商品である場合はCBO(Bond)といい、CDOはこれらの総称になります。
CLOの分類
①発行目的
バランスシート型:銀行が貸出債権を担保にCLOを発行することで、現金を増やし、自己資本比率の圧縮を目的としています。
日本で発行されるCLOのほとんどはバランスシート型となっています。
アービトラージ型:市場から取得する債権の利回りとそれを担保に発行するCLOの金利差益を狙います。
米国で発行されるCLOのほとんどはアービトラージ型となっています。
★日本の自己資本比率をはじめとした銀行に対する規制が米国と比較して厳しい点、
米国のようなCLOマネージャーが日本には定着しておらず、利潤を目的としたCLOの活用が普及していないという側面から発行目的の違いが表れています。
②ストラクチャー
キャッシュ型:SPVが担保資産を保有するCLOです。
シンセティック型:SPVが担保資産を保有せず、クレジットデフォルトスワップを利用するCLOです。
③運用手法
キャッシュフロー型:担保資産からのキャッシュフローで元利返済を行うCLOです。
マーケットバリュー型:担保資産を積極的に入れ替えて、リターン増加を目指すCLOです。
金融機関により発行されている担保付の社債で、不動産担保付住宅ローン等の信用力の高い資産のプール(カバープール)を担保とし、
金融機関が破綻しても、金融機関とカバープールの双方に請求することができるデュアルリコースという特徴を持っている社債です。
カバードボンドには特別法に基づいて発行される法制カバードボンドと、
一般的なストラクチャードファイナンスによって発行されるストラクチャードボンドの2種類があります。
日系金融機関ではSMBCとSMTBがストラクチャードカバードボンドを発行しています。
※日本にはカバードボンドに関する特別法は無い為、法制カバードボンドの発行履歴はありません。
プロジェクトファイナンスとは
企業があるプロジェクトにおける資金調達を行う際に、プロジェクト自体から生じるキャッシュフロー
(事業から発生する収益や事業の持つ資産)をもとに資金を調達する方法です。
プロジェクトファイナンスを導入する事で対象事業のリスク・リターンが明確になるメリットがあります。
コーポレートファイナンスとの最大の違いは、企業ではなく、プロジェクト遂行のための別組織であるSPVが借入主体として資金調達を行うことにあり、
不動産ノンリコースローンも広義のプロジェクトファイナンスに含まれます。
(特に、稼働中物件のパーマネントローンと開発中物件のコンストラクションローンに利用されます。)
PFI法
PPP(Public-Private Partnership、公民連携)とPFI(Private Finance Initiative、民間資金活用型施設整備事業)は、
公共事業に民間の資金やノウハウを活用する手法です。
PFIはPPPの一形態で、特に「民間資金を活用して公共施設を整備・運営する」ことに焦点を当てた手法です。
本法は民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律であり、
2011年に法改正が行われ、資金調達後民間企業が公共施設を設立した後、
長期間運営権を付与する「コンセッション方式」が導入されました。
また同改正により船舶、航空機の輸送施設及び関連施設もPFI事業の対象となりました。
PFI事業にはいくつかの方式がありますが、
最も多いのは民が施設を建築した後に公に所有権を移転し、民が維持管理、運営を行うBTO方式です。
公的機関からみたPFI事業の投資判断
PFI事業のLCC(ライフサイクルコスト)がPSC(期中の公的財産負担)を下回れば、投資妙味がある(VFMがある)と判断します。
(自前でやるよりも民にやらせる方が安ければVFMがあるという事です。)
投資信託・投資法人(REIT)
REITでは投資口の発行によるエクイティ性資金の調達の他、「投資法人債」という債権を発行しデッドの調達も行います。
※投資法人債は、クローズドエンド型のみで認められている資金調達方法であり、オープンエンド型の私募REITでは発行が出来ません。
投資法人債(デッド)による調達はリーマンショック前が最も多く、(約3,000億円)
リーマン直後の数年間はほどんど発行がありませんでした。
一方でエクイティ性資金調達もリーマンショック前とアベノミクス効果の2013年が最も大きく、約1兆円超が調達されました。
一般的に、投資法人債での調達に要するのは約1ヶ月、エクイティ調達に要するのは約2,3ヶ月 の期間を要します。