デューデリジェンス(建物の法的、経済的な調査)とエンジニアリングレポート(建物の物理的な調査)は不動産証券化に限らず、
不動産を取得する買主や購入後の管理会社(PM)にとって欠かせない作業です。
本記事ではその調査内容について解説いたします。
◆デューデリジェンス
○土地状況調査
・・・登記簿や公図による調査(現地の測量と差異はないか)越境物(フェンス、塀、植栽など)の確認、過去に越境等によるトラブルは無かったか、埋蔵物、地盤強度、土質 など
○建物状況調査
・・・築年数、構造、延床面積、法令遵守状況(建築基準法、消防法など)、修繕履歴、今後の修繕見積、再調達価格(建て直した場合の建築費用)
○環境調査
・・・アスベストやフロンなどの有害物質の含有に関する情報、土壌汚染、地下水汚染状況、日照条件、電波障害はないか など
○法的調査
・・・所有権、賃借権、占有者の有無、売買契約書内容自体のチェック、調整(ドキュメンテーション)
※テナントの賃貸借契約内容は「賃貸借契約書」で確認する必要があります。
(所有者サイドで作成されたレントロールは事実と異なる場合がある為。)
また、取得予定不動産が「借地上」の建物である場合、借地権者への地代支払有無などをヒアリングする必要があります。(借地契約が契約書を介さず、登記もされておらず、口約束の範疇となり、うやむやになっているケースがあるからです。)
○経済的調査
・・・対象不動産周辺地域特性、個別要因、過去の稼働率、賃料の推移(過去ー現在将来)、入居中テナントの内容 など(運用利回りに直接関係する事柄が多いです。)
★特に経済的調査で重要なのは「アップサイド要因」「ダウンサイド要因」の検討です。これはエリア特性を鑑みてこれから賃料は上昇か、下落か、
上昇させるためにはリノベーション、コンバージョン(用途変更)など、それぞれの手段においてどれだけの上昇が見込めるか、
建物老朽化による賃料下落推移はどのようになるのか、といった期中管理における収入・支出予測に絡めて賃料(資産価値)の上下を予測する必要があります。
◆エンジニアリングレポート
・短期的修繕、更新、改修費用:1年以内に改善が必要と思われる事項。
・中長期的修繕、更新、改修費用:1年以上先ではあるものの、期中(保有期間)に発生する可能性があり、準備すべき事項。
★修繕費とは「回復」させる費用、更新費とは「交換」する費用、改修費とは「新築時より良くする」費用を意味します。
・遵法性:違法建築物、既存不適格建物でないか、どうかの調査。確認済証、検査済証の照会が必要。
・再調達価格:建て直した場合の建築価格。(精密な建築価格を出せれば現状の建物躯体、設備状況の詳細な調査結果の把握に貢献します。)
※解体撤去費用や移転引越し費用等は含みません。(あくまで更地に建てる、とした場合の価格。)
・地震リスク評価
・建物リスク評価(フェーズⅠ):建築図面や現地調査(外観のみ)を元にリスクの有無、遵法性を評価する。
・土壌汚染リスク評価(フェーズⅠ):現所有者の開示資料や現地調査(外観のみ)を元にリスクの有無、遵法性を評価する。
★フェーズⅡ調査は外観の目視確認にとどまらず、建物であれば分解調査、土壌であれば掘削調査をオプションとして実施します。