資産会計総論
・正常営業循環基準
営業取引を通じて現金にはじまり、現金に戻る過程(常営業循環過程)にある項目が流動項目、それ以外を固定項目とする基準。
・一年基準
貸借対照表日(決算日)の翌日から起算して一年以内に換金が予定されているものは流動項目、一年以上先の予定のものは固定項目とする基準。
★まず正常営業循環基準に照らし、流動項目に含まれないものについては一年基準に照らして再度分別し、固定項目を抽出する。
営業取引に関係のある債権債務は流動項目に属するが、一年以内に回収・支払がされない事が明らかな債権(破産債権、更生債権等)や債務(借入金・保証金等)は固定項目に属する。
(正常営業循環には含まれないと判断する)
経過勘定項目の前払費用は来年一年分は流動項目、再来年以降の分は固定項目に属する。
(一年基準を適用する)それ以外の経過勘定項目は全て流動項目に属する。
取得原価は資産の取得に要した支出(相手方に支払った対価)によって算定される。
費用配分の原則:資産の取得原価のうち、その費消部分(経済価値減少分)を当期の費用として配分し、減価償却費として計上する。残存経済価値は資産(来年以降の費用)として計上する。
◎取得原価主義:資産評価の基礎を当該資産取得時の実際の取引価額に求める会計思考をいう。
★企業の全ての保有資産を毎期毎に評価し、時価に直すのは合理性を欠くため、またステークホルダーの検証可能性を確保するためにも取得原価主義が採用されている。そもそも、毎期時価評価をすると言うことは未実現利益を計上してしまう可能性がある為、適切でない。
※反面、取得原価主義を採用すると貸借対照表価額と時価に乖離が生じたり、計算される利益に保有利得が混入してしまうといったデメリットがある。
時価主義:資産評価の基礎を当該資産の評価時点における市場評価額または経済価値に求める会計施行をいう。論拠として、経営者の真の受託責任の遂行状況を明らかにするためには時価主義を採用した方が適合性を持つと共に、売却時価で資産を評価する事で債権者保護のための債務弁済能力を明らかにする事ができるといったものがある。
再調達原価:購買市場と売却市場が明確に区別できる事を前提とした場合の購買市場価格をいう。経済的実態を反映できる、操業利益と保有利得を明確に区分できるメリットがある一方で、
評価額決定の際に主観が入り混じったり、評価益が発生してしまうデメリットがある。
正味実現可能価額:購買市場と売却市場が明確に区別できる事を前提とした場合の売却市場価格をいう。換金価値を反映できる(債権者保護)メリットがある一方で、評価額決定の際に主観が入り混じってしまうデメリットがある。
割引現在価値:資産が生み出す将来のキャッシュフローを現在価値に割り引いた価値。
企業会計原則において、資産は過去の取引または事象の結果として、報告主体が支配している経済的資源と定義づけられる。
ここでの経済的資源とは、当該企業にとっての経済的な役立ち、つまり将来キャッシュの獲得に貢献する便益の源泉であり、資産の定義に求められる本質的な要件である。
支配するとは所有権の有無にかかわらず、報告主体が経済的資源を利用し、そこから生み出される便益を享受できる状態を指す。
したがって、支配とは報告主体ではない他者が、その経済的資源からの便益に接近することについて、否定または制御できることを意味している。
さらに、経済的資源は過去の取引または事象の結果として生じたものであるとされ、資産の本質的な要件である経済的資源は既に発生した取引に基づくものであることが要求されている。
企業会計原則では、資産を流動資産、固定資産、繰延資産の三種に分類し、負債を流動負債、固定負債の二種に分類している。
この分類は、企業の支払能力、財務流動性の見地から実践的に財政状態を捉えようとしたものである。
資産又は負債を流動項目と固定項目に分ける基準には主として正常営業循環基準と一年基準の2つがある。
正常営業循環基準とは、営業取引を通じて現金にはじまり、現金に戻る過程にある項目については流動項目とし、その過程の外にあるものを固定項目として分類する基準をいう。正常営業循環基準によって、流動項目に分類されるのは主たる営業取引により発生した債権及び債務や商品、製品等の棚卸資産等である。
これに対して一年基準とは、貸借対照表の翌日から起算して一年以内に換金若しくは支払いが予定されている項目については流動項目とし、一年を超える項目については固定項目とする基準をいう。
企業会計原則では原則として、まず正常営業循環基準を適用し、この循環過程に含まれない資産、負債項目に対しては一年基準を採用することとしている。
通常の市場交換を通じて購入した資産の取得原価は、当該資産の取得のために要した対価によって算定される。
なぜなら支払対価こそが取得資産の取得事実を客観的に示すものであるからである。また、通常の市場交換においては、支払対価は取得資産の公正な価値にほぼ等しいと考えられ、支払対価は取得資産の価値を表現するものとして信頼しうる指標を提供するからである。
取得原価主義とは、資産評価の基礎を、当該資産を取得した時の実際の取引価格に求める会計思考をいう。
取得原価主義においては、資産の貸借対照表価額は、当該資産の取得原価から当期までの費消額を控除した残額として求められる。
ゆえに、取得原価主義は費用配分の原則、費用収益対応の原則等の損益計算原則と密接に結びついているといえる。
現行の制度会計の目的は、分配可能額を適正に算定表示する事によりよって受託責任を明らかにし、もって外部利害関係者の判断を誤らせないようにする事にある。
このような目的を果たすためには、制度会計の特性として、検証可能性、保守主義性、制度的実行可能性が求められる。
取得原価主義は資産の取得から費消及び売却までの記録計算上、検証可能性と制度的実行可能性を有しており、未実現の利益の計上を排除する点で保守主義性を有しているといえるため、制度会計上、取得原価主義が採用されるに至っている。
取得原価主義の問題点として以下のものが挙げられる。
1.貸借対照表価額が時価と乖離する
取得原価主義によれば、資産の保有中に時価の変動が生じても評価替えされない。そのため、価格変動時には期末評価額が時価と乖離してしまう。
2.計算利益に保有利得が混入する
例えば売上高と売上原価の対応関係から考察した場合、売上高は現在の物価水準であるのに対し、売上原価は過去の支出額に基づいている。そのため、物価上昇時には営業活動の成果ではない保有利得が利益の中に混入し、業績を正しく把握できない可能性がある。
3.物価変動を反映して資本維持が図れず、経営者の受託責任が果たされない
過去の支出額は現在の物価水準を反映した収入から回収され、残余は分配可能となる。すると、高騰した資産を再取得するための資金が内部留保されないことになる。すると、経営者は企業活動を継続するための実質的な資本を維持することができず、受託責任が果たされない。
費用配分の原則とは、資産の取得原価のうち、その費消部分を当期の費用として配分するとともに、未費消部分を次期以降の費用、つまり資産として配分すべきことを要求する原則をいう。
また、取得原価主義とは、資産評価の基礎を、当該資産を取得したときの実際の取引価額に求める会計思考をいう。
すなわち、資産の取得原価のうち費用配分の原則によって各事業年度に配分された部分が費用額であり、未配分の取得原価が各事業年度末の資産評価額、すなわち貸借対照表額であるといえる。
したがって、費用配分の原則は、各会計期間の損益計算書にけいじょうすべき費用を正しく測定するための原則であると同時に、貸借対照表に記載すべき資産の評価額を正しく算定するための原則でもある。
また、費用収益対応の原則とは、経済的価値犠牲としての企業努力を費用として、その結果として獲得する企業成果を収益として把握し、両者を対応させることで企業の純利益を算定することを指示している原則である。
すなわち、費用性資産の取得原価を費用配分の原則によって各会計期間の費用として配分するためには、それが当該資産によって生み出された当該期間の収益と合理的な対応関係を有していなければならない。これは費用配分の原則と、費用収益対応の原則の一体不可分性を意味している。